【第599回】 槍の術理で体をつくる
開祖は、「合気道は昔の剣、槍、体術を宇宙の理に取り入れてできたものである。」と言われているから、剣、槍、体術を研究して、合気道の稽古に取り入れていかなければならないだろう。
まず考えなければならない事は、大先生(開祖)は、ご自身、剣、槍、体術を徹底的に研究され、身につけられたわけだが、我々ほとんどの者は剣も槍も体術(柔術)を稽古してこなかったはずなので、剣も槍も体術も知らないはずである。だから、大先生が言われているように、知らない剣、槍、体術を宇宙の理に取り入れることは難しいことになる。
ということは、大先生とは異なるやり方が必要になるわけである。
そのやり方は、合気道で培っていく宇宙の理で、剣、槍、体術を身につけ、それを技に取り入れ、そして宇宙の理を確認し、深めていくことだと考える。
今回は剣、槍、体術の内、槍に絞って、宇宙の理で槍をどのように扱い、合気道に取り入れていくことができるのかを研究してみたいと思う。
但し、合気道では槍をつかっての稽古はなく、代わりに杖をつかっているので杖の説明になるが、恐らく槍も同じようにつかえるはずであるし、使えなければならないと考える。
槍の基本は突きである。合気道では杖取りという試験科目があるが、突きの杖を取るのが基本で、杖道のように打つ、叩くという攻撃に対してのものはないはずである。
杖での槍の稽古も基本は突きの素振りということになる。この突きの素振りから学べる事には下記のような宇宙の理があるから、それを確認するとともに、身につけるのに最適な稽古法だと考える。
- 右手右足、左手左足が左右陰陽で、同じ側の手と足が一緒に陰陽で働く:素手で動くと、はじめはどうしても手と足をばらばらに動かしてしまうものだが、杖を両手でつかんでいるので、手がばらばらに動くことはない。後は足が右左動くのに合わせて手を動かせばいい。
- 十字:十字の宇宙の成り立ちと営みに則って杖と体を十字につかう:
一つは、杖を突くと、その杖に対して前足は十字になる。後ろ足はその前足に対して十字になる。(三つ目参照)
二つ目は、腰の十字である。杖を突き切った時と引いたときに腰は爪先方向に対して十字になるのである。
三つ目は、左右の足の十字である。撞木足になり、杖を突いたとき、引いたときは撞木の十字になるのである。
- 地の息づかい:赤玉、白玉、つまり潮の干満の交流の息づかいで杖の素振りをするのである。特に、引く息を大きく強くし、体中に気(宇宙エネルギー)を一杯入れるのである。
- 気の交流:突く際は、引いて貯めた気を杖先に集中して、力とともに出す。上記の気と合わせた気の交流である。
- 螺旋:杖を扱う手は螺旋でつかう。螺旋で動くと、動作が切れないし、力が出る。
- 手と腰腹を結び、腰腹で手と杖を操作する:中心に末端を結びつけて、中心で末端をつかうのである。
これは足も同じである。腰腹と足を結び、腰腹で足を操作するのである。
宇宙の中心の天之御中主神にならなければならないのである。
等々、槍の素振りから多くの事が学べる。ここから学んだ、陰陽、十字、息づかい、螺旋などを徒手での形稽古で技につかい、体をつくっていくのである。
また、この学びにより、昔の槍の術理はどのようなものであったのかが段々分かってくるはずである。そして、昔の先人と繋がり、過去と繋がっていくことになるのである。
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