【第577回】 阿吽(アウン)の呼吸を更に

これまで何回かにわたって阿吽や阿吽の呼吸について書いてきたが、その阿吽を意識して稽古をしてきて更にわかってきたことがあるので、今回はそれを書く。

阿吽の呼吸はただ口を「阿」と開け「吽」と閉じるのではない。
「阿」は下腹を締めながら腹を膨らませると息が上がってきて口が開き、「吽」はその上がった息を口を閉じながら腹に収める息づかいと考える。
この阿吽の息づかいと口と腹の関係が分かり易いのは下記の写真(仙台在住のデザイナー高橋裕氏撮影)である。
阿吽で腹と口が結んでおり、また阿吽の口は腹で操作されているのがよくわかる。

ただ口を開け、口を閉じるのではない。単に口をアと開けたらびっくりしたときのようだし、下腹は空っぽになり、とても武道につかえるものではない。
また、口を閉じるのも、単に口を閉じたり、力むのではない。力めば下ろした息と腹とが衝突してしまい動けなくなるし、次の息と動作に繋がらなくなる。

阿吽の呼吸のポイントは仙骨にあると考える。極端に言えば、仙骨で呼吸するのである。仙骨を支点に息を上げ、そして腹に息を返すのである。
従って、阿吽の呼吸で腹も鍛えられることになる。この阿吽の呼吸をしている仁王様の姿がそれを示している。

阿吽の呼吸のもう一つの大事な特徴は、長くも短くも、強くもやさしくも、激しくも静かにも自由にできることである。つまり、陰陽表裏一体の息づかいということである。ゆっくりの息の中には常にいつでも強く、激しい息が控えているのである。体も技もその阿吽の息でやれば、ゆっくりもやさしいも、また速いも激しいも同じことになってしまうことになる。相対稽古で相手が誰でも十分鍛錬はできるわけである。

この陰陽表裏一体の阿吽の呼吸で自由自在に技をつかっていくようにすればいいだろう。