【第572回】 仙骨の不思議

仙骨については、第568回第569回に書いているが、この仙骨を意識して稽古をしたり、日常生活をしていくと、更なる新しい発見があり面白いし、仙骨の不思議さや重要性が再認識される。

合気道の相対稽古で技を掛ける際、体の中心の腰腹からの力を手先に伝えなければならないが、その力の流れは肩や肘や手首などの関節で邪魔がちである。そしてそこの関節部位が折れ曲がってしまいのである。関節部が折れ曲がってしまうのは、その部位が十字に働かないからである。十字に働かすためには、その関節部を支点として縦、横の十字につかわなければならない。
縦、横の十字が○(丸)となり、螺旋となるから折れ曲がらなくなり、力が流れるのである。

前に、四十肩や五十肩で肩を痛めるのは腕を肩のところで十字につかわないからだと書いた。剣を振るのも十字である。
これまでは、十字にからだをつかうためには、息、イクムスビやアウンの呼吸に合わせてやればいいと書いてきている。
まずは、息に合わせて体の各部位を十字につかっていく稽古をしなければならない。

しかし、己の体でもなかなか思うように十字になってくれないものである。稽古を積めば、少しずついい十字になるのだが、何か引っかかるのである。
その原因は、そこの体の部分を動かそうとしているからのようである。末端とか部分を動かすのではなく、中心の支点を動かさなければならないのである。

体の関節を十字につかうための更なる秘訣が「仙骨」にあるのである。仙骨を息に合わせてつかうと各関節のロックが外れて自由となるので、十字に動かしやすくなるのである。
仙骨から息を吸いながら剣を振り上げると、肩周辺の筋肉が緩み、自然と縦に上げた腕が横に広がり、更に上に上がる。

仙骨で息を吸うと、肩だけではなく、肘でも手首でも、また、腰、膝足首なども緩み、自由に動けるようになる。
また、仙骨に息を入れると(吐く)とそれらの関節は固定化し、安定化する。

街で歩いているお年寄りを見ていると、多くの方がチョコチョコと不安定に歩いている。体が固まっていて動かないで、足だけが動いているのである。
その方たちの仙骨辺りを見ると、例外なくそこが固まって動いていないのである。仙骨が硬くなり、腰が固まり、その固まりが背中に広がっていっているのである。このままではいづれ歩けなくなってしまうだろう。
でも、おそらく その固まりが取れれば、地を踏みしめるしっかりした歩き方ができるはずである。仙骨が動くような柔軟運動でもすればいいのにと思いながらいつも心配している。

仙骨でもう一つ気が付いたことがある。それは顔のゆるみとほほ笑みである。仙骨に息が入って緩むと顔が緩み、そしてほほ笑みが出るのである。
街を歩いていても緊張したり、しかめっ面をしている人の仙骨は固まっているはずである。

仙骨にはまだまだ不思議があるようだから、更なる研究が必要だ。