【第566回】 背筋を伸ばす

芸事や習い事など人にお見せするものや武道など技を磨くものは体のつかい方や姿が大事である。これらに共通して言える大事なポイントの一つに、「背筋を伸ばす」がある。背筋が伸びていなければ、美しくもないし、思うように力もでない。

「背筋を伸ばす」とは、背中の中心を構成する筋をしっかりと伸ばすことである。筋を伸ばすことによって、背中の24個の骨を正しくS字カーブになるよう保つと言われる。
背骨には24個の椎骨と仙骨と尾骨がある。
24個の椎骨は頸椎、胸椎、腰椎の3つに分類でき、頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個あるが、今回は腰椎と仙骨に的を絞って研究することにする。

調べてみると、腰椎は上下に薄く、そのわりに直径の太い円柱状の骨が5つ積み重なった構造なので、本来腰椎は曲げるのにも、ねじるのにも適していない部分であるとある。また、腰椎は、上体の重さを受け止める支えで、ショックアブソーバーの役割をするという。

合気道の相対稽古を見ていると、師範や高段者の腰椎は真っすぐに盤石で、捻ったり曲げては使っていない。そこにいくと初心者などは曲げたり、ねじったりしているのが多い。これが後で腰を痛める原因になっているのだろう。

さて、これは一般的な腰椎の解釈であるが、合気道での技づかい、体づかいでは更なる重要な働きがある。
合気道は陰陽の武道でもある。出して引く、弾いて吸収する、上げて下げるなど相反するものが一体となって働くのである。
相手に技を掛ける際、足で地面をけって体を上げたり、体(重)を只下に落とすだけの一方通行ではなく、気と息と体(重)を下に沈めながら気と息と体(重)を浮き上がらせるのである。これを摩擦連行といい、合気道の極意という。
全ての技は摩擦連行でやらなければならないが、二教小手回しや座技呼吸法などはこの摩擦連行でやらないと効かないものである。

この相反する陰陽の力を陰陽(上と下、外と内など)に分かれる箇所がこの腰椎であると考える。分かり易いように、四股を踏んでみるといい。この腰椎を意識して、気と息を入れると力は地と天に分かれていくのがわかるはずだ。また、この腰椎を意識しないでやると力が一方にしか働かないので不安定になりがちである。また、日常生活において、例えば、靴下を立ったまま履く場合、ここを意識すると、力が上と下に働くので安定し、倒れずに履けるはずである。

背骨を伸ばすは先ずは腰椎からやってみればいいだろう。

この腰椎をつかう稽古をしていると、腰椎の気(宇宙エネルギー)は他の箇所から来るように思われる。それは「仙骨」かららしい。次回は、「仙骨」の研究をしてみたいと思う。