【第559回】 息で体をつくる

前回の第558回では「体をつくるとは」と、合気道の体づくりの全般的な概要を書いた。今回は、「息で体をつくる」というテーマで、体づくりを具体的に書いてみることにする。

合気道の相対での技の稽古をする上でまずい体(体幹や手などの体の部位)とは、芯が通っていない、折れ曲がる、真っすぐにならない等であろう。このようなまずい体で技を掛けても、力が出ないし、出した力が戻ってきたりして、力が十分に発揮できず、技も効かないことになる。

技の稽古において、体に芯を通したり、折れ曲がらない手をつくったり、日本刀のような真っすぐな手をつくるわけであるが、相対の稽古ではそれは難しいものである。何故ならば、相対での稽古では注意が別の方にいってしまい、それに集中できないからである。

従って、まずは自主稽古での一人稽古でその体づくりをすればいいだろう。
そしてこの自主稽古をやっていくとわかるのだが、芯が通る、折れ曲がらない、真っすぐな体や体の部位をつくるのは、息づかいによる稽古によって身に着くのである。
例えば、息づかいによって、伸びる指、手先、腕の稽古をすると、折れない手、腕の稽古になるし、また、曲がらない、真っすぐになる稽古にもなるわけである。

それではどのような息づかいの稽古をすればいいのかを、紹介する。
それはイクムスビの息づかいでやるのである。

  1. 手先をイーと息を一寸吐いて伸ばす、
  2. クーで息を思いっきり吸い、指、手先、腕をまっすぐに思い切り伸ばす、
  3. ムーで指先に力を流しながら息を吐くと、更に、指、手先、腕がまっすぐに伸び、芯ができる。芯が出来る感覚は、息によって「気」(エネルギー)が流れていることによるのだろう。
このイクムスビの息づかいによる稽古で、指、手先、腕は柔軟になるし、強靭にもなり、折れない、曲がらない手になる。

また、体(体幹)を同じように鍛えるためにも、息づかいである。縦と横、胸式と腹式呼吸によって、真っすぐな体、強靭な体がつくれる。
勿論、下半身も同じように、息で鍛えることができる。というより、体を鍛えるためには、息でやらなければならないはずである。

ただ稽古をやっていても体は造られない。理に合った稽古をしなければならないのである。開祖は、「肉体は理によって造りあげるものであります」(『合気神髄』).21)と云われているのである。