【第553回】 タカアマハラに見習って体をつくる

合気道で錬磨する技は、宇宙の営みを形にしたものであり、宇宙の法則に則ってつかわなければならない。
合気道の技をつかうためには、これまで書いてきたように、まず、その体をつくらなければならない。そして次にその体を法則に則ってつかわなければならない。

人は大宇宙の擬態であり、小宇宙とも云われる。従って、人の体をつくるために、大宇宙がどのようにしてできたかを研究し、そしてそれを人の体づくりに取り入れていけばいいと考える。

大宇宙をタカアマハラという。そしてこのタカアマハラの六声の中に、宇宙の始まりから成就までのプロセスが示されているといわれる。
それを開祖は、「は対照力。東は西、南は北、陰は陽、動は静、明は暗、顕は幽、生は死に対す。そして六全八角八荒にみな悉くこの対照力起りて、至大浩々恒々たる至大気海を全く張りつめる時、ここにはじめて球の形顕わるなり。対照力は、みな悉く両々相対して、その中間を極微なる点の連珠糸にて、掛け貫き保ちおるなり。は掛け貫く力(みな悉く両々相対して、その中間を極微なる点の連珠糸(さぬきいと)にて、掛け貫き保ちおるなり)。は神霊顕彰、宇宙全くはりつむるなり、而して宇宙為。は全く張りつめて玉となる。神霊元子が活気臨々として活動している気を称して、一言にという。その造化機が運行循環しつついる気を称してという。即ち循環運動(運行)のことである。」(武産合気P.29)」

また、「タカアマハラは造化器官で、すべてのものを生み出す家なのです。
タカアマハラは造化機関であり、人もまた同じ素質、同じめぐり、動きをもっている造化機関なのであります。」という。

それでは、すべてのものを生み出す造化機関であるタカアマハラに則って、この技をつかえる人の体をつくるにはどのようにすればいいのかを研究してみよう。
勿論、この体をつくるためには、我々は合気道の技を稽古するほかない。タカアマハラと同じ素質、同じめぐり、動きをもってやるのである。

分かりやすいために、片手取り呼吸法での稽古の場合を考えればいいだろう。
:対照力である。相手と対峙し、受けの相手に手を取らせる。ここに対照力が生まれる。引いたり、押したりの一方向の力ではなく、出す・引くの双方向に働く対照力で掴ませるのである。
宇宙が出来る前、対照力が生まれる前は、無で何もなかったわけだから、稽古でも己を何もない状況におかなければならないことになる。そのため、まずは、「天の浮橋に立つ」ことが重要である。
:カは掛け貫く力。二人の手に対照力が生まれると、そこに対照力が働き、相手と結び貫く力が働き、相手と結び一体化する。
:アで神霊が現れ、宇宙がはりつむり、宇宙になるとあるから、ここで息を入れて、宇宙の気(エネルギー)を取り込む。
:マは全く張りつめて玉となるとあるから、息を更に入れて、腹に満たし、気で体が満ちるようにする。
:神霊元子が活気臨々として活動している気を称して、一言にハという、とあるから、ここで気の活動が活気臨々とはじまる。
:ラは造化機が運行循環しつついる気を称しているので、ここから体の循環運動、つまり、気の運行循環の準備が整い、技が自由につかえるようになるわけである。

この後から、手足を十字、陰陽につかって、技をつかうことができるわけである。

ただ無暗に、技を掛けるのではなく、まずは、天の浮橋に立ち、タカアマハラと同じ素質、同じめぐり、動きをもつ造化機関をつくり、そして宇宙の営み・法則に則った技づかいをしていかなければならないと考える次第である。