【第552回】 手の平の角度と肘

「第547回 手先の回転角度」で書いたように、手首から先の手の平は、約45度の角度まで回転する。内回転と外回転、そして上・下共に45度である。正面打ち一教・二教・三教などで、相手が打ってくる手を止めたり、その腕を押さえ、引っ掛ける際は、この手の平の回転が大事である。という事は、この手の平の回転が上手くいかなければ、いい技にならないということになるはずである。

手の平が45度に回転するというのは、技としてつかう場合で、力を抜き、気を抜いた時の回転ではない。力を抜いて回転させれば90度ぐらいは回転するわけだが、技にはつかえないので問題外である。

力をつけ、体をつくり、息づかいを覚える稽古法で最良なものは呼吸法であろう。従って、手の平に気と力を通し、しっかりした手の平をつくり、そしてその手の平を45度の角度で回転するような稽古は、やはり呼吸法が最良であると考える。とりわけ片手取り呼吸法である。力がついてくれば、諸手取呼吸法をやればいい。

己の腰と手先を結び、腰から力と気(持)を手先に通して、息を吐きながら、己の手を相手に取らせる。そして取らせた手で相手と結んだ後、相手の力を引き出し、己の円に取り込むのだが、ここで手の平の回転が必要になる。十字である。

己の手を取らせた時の手の平の角度は、地に対して直角90度である。相手の力と体を引き出すためには、手の平は地に対して平行の0度にならなければならない。つまり、直角から90度回転しなければならないのである。

しかし、気と力のこもった手の平は45度しか回転しないのである。ある程度力の或る人がやっても、45度の回転では相手を引き出すことはできないか、折角相手が持っていてくれている手を離してしまうことになるのである。
手の平は、更に45度、合計90度回転しなければならないのである。
(慣れてくれば、手の甲を下に90度回転させてやることもできるだろう。)

それでは、手の平が90度回転するためにはどうすればいいのか。答えは、肘を支点にして手の平を回転させることである。ここで大事な事は、手の平に力と気をいれたままで、それを抜かないで、腰と結んだ肘を回転することである。

手の平が90度回転すると、その手首を持っている相手の肘も90度回転して、その肘が下を向き、力が出せなくなるから、後は、己の円の動きに相手を入れて収めればいい。

この肘を支点に90度回転する稽古法に、逆半身片手取り転換法がある。掴んでいる相手の肘が下を向き、己の肘の下になるように稽古をすればいい。

手の平を更に90度以上返す場合もある。その場合は、肘より上の肩を支点の回転角度をつかわなければならない。例えば、内回転小手返しは、手の平を90度以上回転させなければ技にならない。肩を支点に回転すると更に45度ほど回転するので、合計約135度の回転になる。

手の平の回転角度と体の部位の関係を更に研究して、技に取り入れていかなければならないだろう。