【第545回】 肩取り面打ち

前回の第544回では「掴ませた箇所を鍛える」を書いた。今回はこの続きとして、肩取りで肩を鍛えるというテーマで書いてみる。

肩取りにもいろいろある。受けが肩(周辺)を掴んで攻撃するわけだが、これは第一弾の攻撃であり、本来はここから更なる攻撃がある。例えば、肩を掴んでいる他方の手で、相手の面を打ったり、突きを入れるのである。つまり、この第二段の攻撃のために肩を掴むわけである。

合気道の肩取りの形として、まず、第一弾の肩を掴ませたところで技を掛けるものがある。例えば、一般的な形として、一教や二教であろう。

次に、第一段目の肩を取ってくる攻撃の後、第二段目の攻撃がくる。例えば、面を打ってきたり、顔面や胸をついてくる。「肩取り面打ち」、「肩取り突き」である。

第一段目の肩取りの段階で技を掛ける意味は、第二段階の攻撃が来る前に技を掛けてしまうということである。従って、注意しなければならない事は、受けの相手は、第二段目の攻撃を準備しているはずなので、その危険領域内に入らないようにすることである。

肩のつかい方は手と同じと考えるべきだろう。つまり、肩も右左陰陽でつかわなければならないし、相手が掴んでいる支点の肩を動かさず、その対極をつかって動かさなければならない。また、肩も息に合わせてつかわなければならない。つまり、イクムスビの息づかいでつかうのである。手と同じように、肩でも相手を弾かず、引き離さず、引力でくっつけてしまわなければならない。

このように肩がつかえるようになり、相手を引力でくっつくようになれば、息と気により、大きくも、激しくも動くことができるようになり、肩の力が養成され、筋力、柔軟性、引力がつくことになる。これが肩取りの稽古の意味と考える。
稽古が進んで行けば、相手が肩に触れた瞬間に、手をつかわずに相手を地に伏せさせることができるようになるものだ。肩が手になるのである。
肩取りは、肩を手のように自由につかえるようにする肩の鍛錬法である。

初心者は、「肩取り面打ち」で、相手が打ってくる手と接した手で、相手を倒そうと、技を掛ける。折角、相手が掴んでくれている肩をつかわず、正面打ちと同じように手で相手を倒そうとするから、上手く技が掛からないのである。
それは、そこには大きな間違い、つまり、法則違反があるからである。
それは、合気道の技づかいにおいて、攻撃してくる相手と最初に接した部位(箇所)が、技を掛けるにあたって最も重要であり、主にその最初の接触部で相手と結んでしまわなければならないからである。最初が肝心なのである。
肩取り面打ちで、最初に相手が接触してくる部位は、こちらの肩であるから、肩がメインにならなければならないのに、二番目に接触する手で技をかけることである。肩取り面打ちも、主に肩で技を掛けなければならないのである。

また、手を掴ませるより、肩を掴んでもらった方が、大きな力が出て、相手を自由に導くことができるものだ。肩を理合いでつかえば、手先でやるより、技は効きやすくなるのである。
更に、肩は、手よりも体幹の中心に近いところにあるので、末梢にある手よりも大きな力がでるのである。

肩取りで、肩が自由につかえるようになれば、更に体のすべての部位が、肩と同じように、自由につかえるようにしなければならない。形稽古で、相手が掴んだり、接した箇所で技がつかえるようにするのである。そして体のすべての箇所が、手のように働くようにするのである。