【第542回】 息を吸い込む折には、全部己の腹中に吸収する

開祖が言われたこと、書かれたことで、以前から疑問に思っていることがある。その一つに「息を吸い込む折には、ただ引くのではなく、全部己の腹中に吸収する。そして一元の神の気を吐くのである」(合気神髄 P14)がある。

まず、息を吸いこむのは、横の胸式呼吸であるはずだが、腹で吸うということである。しかし、腹は縦の息を吐く仕事をするはずである。
だが、この疑問は解けた。腹でも息を吸うことはできるのである、しかも、腹で息を吸うと、体が天の浮橋に立った状態になり、相手をくっつけたり、導く、腕力とは違う力(呼吸力、気)が働くことが分かったのである。
腹で息を吸い込むとはどういうことか、どうすればできるかは、前回の第541回「縦横十字の息と丸い息づかい」で書いたので省く。

次に、「ただ引くのではなく、全部己の腹中に吸収する」である。
普通に、腹で息を入れようとしても、大して入らないものである。とても「全部」(相手や己の周辺のもの、天と地、宇宙等であろう)を吸収することはできないはずである。また、胸式呼吸で引く(吸う)よりも更に強烈に吸収できる。
この「ただ引くのではなく、全部己の腹中に吸収する」感覚は、やはり前回の論文に書いてあるが、天地の気と息に合わせた息づかいをすることによって得られるのだと思う。

「全部己の腹中に吸収した」姿が、開祖の肖像画にあるお腹である。

「そして一元の神の気を吐くのである」と続くわけであるが、全部己の腹中に吸収すると、腹が気で満たされ、そしてその気は上の天に流れていくから、一元の神に帰っていく、一元の神に返すということになるだろう。

これで「息を吸い込む折には、ただ引くのではなく、全部己の腹中に吸収する。そして一元の神の気を吐くのである」の理合いがわかってきたので、この理合いで技を錬磨し、そしてこの理合いを基にして新しい理合いを見つけ、更なる研究をしていけばいいと考えている。