【第53回】 折れない手(腕)

技をかけても上手くいかない原因として、手が折れてしまうことがある。手が折れてしまうから力が戻ってきて相手に十分伝わらず、相手を倒したり、制することができない。

手が折れてしまうのは、いろいろな原因があるが、稽古の日数も少なく、腕の筋肉ができていないために折れてしまったり、相手があまり強くて折れてしまうのは仕方ないとしても、長年稽古をし、筋肉も体力もあるものの手が折れてしまうのは問題があるはずだ。

昔、手がホースに水が流れているように気を通していれば折れないと習ったが、足が静止している常態では上手くいくが、動いた状態ではなかなか上手くいかないものだった。

手が折れてしまう原因の一つは、持たれている部位、相手との接点を動かして技を掛けようとするからである。手先は人間の体の末端にあるので、自分が考えているより弱い力しか出ないのである。だから、しっかり押さえられたところを動かそうとすると、折れてしまうことになる。

次に、腕を陰陽に使わずに、陽々と使ってしまうことである。陰となるところを陽として出してしまうので、自分の肩にぶつかり、腕の長さを調整せざるを得なくなり手を折らざるを得なくなってしまう。また、これに関連して肩も手と連動して陰陽に使わないとつまってしまい、手を折らざるを得なくなる。

折らない手をつくる練習は呼吸法がよい。特に、諸手取り呼吸法、坐技呼吸法がよい。ただし、呼吸法で手を折らないように技を使うには、よほど注意して稽古しないと、どうしてもやりやすい我流となり、上述のように接点を動かしてしまったり、手と足や両肩を陰陽で使わず、手を折る結果になってしまう。呼吸法で手が折れないようになれば、他の形でも手は折れにくくなるだろう。基本中の基本、諸手取り呼吸法と坐技呼吸法で折れない手をつくるとよい。