【第527回】 上中下丹田を鍛える

武術、とりわけ中国武術では丹田(たんでん)を重視している。上丹田、中丹田、下丹田である。上丹田は眉間奥、中丹田は胸の中央、下丹田は臍下3寸のところにあると云われる。
丹田とは、気の田のことで、気から成る丹を耕す田と云われる。丹とは簡単にいえば薬ということだろう。

合気道でも丹田を大事にしている。例えば、開祖は、「遊離の魂を自己の丹田(たには)に、集めることである。遊魂とは想い(魂)が邪霊(業想念)にとらわれて、魅かれて正守護霊からはなれて遊びにいっている状態で、これを自己の丹田に収めることを鎮魂というのです。つまり魂の緒の糸筋を淨めることです。」(武産合気P.87) と丹田という言葉をつかわれている。ただし、ここにあるように丹田は「たんでん」ではなく、「たには」といわれている。

この丹田の働きについては一般に、上丹田は知恵(神)を、中丹田は気力(気)を、下丹田は体力(精)を生み出すところと云われている。つまり、丹田を一口で云えば、気の集まるエネルギーセンターということができるだろう。神、気、精の区別は明確には区別できなくとも、丹田からエネルギーが出入していることは実感できるし、そのエネルギーが大きければ大きいほど、力(呼吸力)もでるし、技も効きやすいことは確かである。
それ故、この上中下の丹田を鍛えることは大事な事であると考える。

丹田を鍛えるとは、これらの丹田に気(エネルギー)が出入りするようにすることだろう。このためには、これらの丹田に呼吸とともに気を出し入れすることだと思う。特に、引く息で沢山の気をいれることが大事だろう。

相対での技の形稽古で、丹田を意識して、そこに息を出し入れしながら丹田を鍛えるのである。この上中下の丹田からは、気が出入りすることが実感できるはずだし、それ以外の箇所からはエネルギーである気が出ないし、入らないことが実感できるはずである。

剣や杖を振る際も上中下の丹田で振ってみれば、力が出るだけでなく、上中下の丹田のそれぞれの働きと役割があることがわかってくるようだ。
また、四股踏みでも、それがわかるようだ。
天の気と結び、宇宙との結びは、上丹田であろうという感じもする。