【第512回】 足の裏

前回の第511回では、「手の平」を開き切ってつかうようにしなければならないとして、「手の平」の重要性と鍛え方を書いた。今回は、「足の裏」も重要であり、そこも鍛えなければならないということを書いてみることにする。

合気道を修業しているとわかってくることであるが、合気道の技をつかうにあたっては、体の各部位が十分に働くとともに、それらが連動して働かなければよい技は創出されないものである。たとえ「手の平」が開き切って、うまくつかわれても、また、手がうまくつかわれても、足がうまくつかわれなければ、よい技は生まれないのである。

技は手でかけるものであるが、「技は足でかける」ともいわれているし、確かにそう思う。足が理合いで動くから、技になるのである。手は、足の上に乗って動いているようなものであると思う。足が止まったり、居ついてしまえば、手を振り回さなければならなくなり、技にはならない。逆に、手は動かさなくとも、足が理合いで動けば技になるものだ。

体の各部位は個々バラバラに鍛えているだろうが、ある程度鍛えたならば、今度は関係部位を連動してつかうようにしなければならない。特に、年を取ってきて力の限界にきたならば、その力を有効につかうしかない。

手の力を有効に、また増幅してつかうためには、足が大事である。なぜならば、足の裏は大地に接し、大地の力(息と気、エネルギー)を取り入れるからである。

大地の力を取り入れるためには、足(足の裏)と大地が密着し、吐く息も吸う息も地の底まで下ろさなければならない。息によって足・体が大地から弾かれてしまったり、浮き上がっては、大地からの力は身体に入ってこない。すると、手にも力が伝わらず、よい技をつかえないことになる。

大地に密着し、大地の力を頂ける足・足裏をつくるにはどうすればよいか、を研究しなければならないだろう。

これも、「手の平」を開き切るのと同じことだと考える。足の裏が大地に密着するということは、引力の発生でもあるから、この足の裏に遠心力と求心力が出るようにすればよいことになろう。その遠心力と求心力を生み出すのも、「イクムスビ」の呼吸ということになる。「イ」と息を吐きながら、軽く足・足の裏で地を踏む。「ク」と息を入れながら反対側の足を地に着けるが、体重と息と気持ちは地底に落としていく。足の裏には遠心力が働き、足の裏は開いて大地に密着するようになる。

今度は息を吐いて、反対側の足を大地に着けるのだが、足の裏で地を弾かないよう、体重と息と気持ちをさらに地底に下げるのである。

しかし、この息づかいが難しい。息を吐くにしろ、吸うにしろ、体が地から弾かれたり、浮き上がってしまうだろうからである。そうならないためには、息を吸う際は胸式呼吸で、そして、吐く際は腹式呼吸をつかわなければならないはずである。腹式で息を吸ったり、胸式で息を吐けば、体は地に沈まないし、地からの力が体に入ってこないことになるはずだ。

足の裏も、呼吸に合わせてやらなければならない。それがわかりやすい稽古法は四股踏みだろう。その完成度を知るには、正面打ち一教や呼吸法がある。それでよいと納得できれば、他の技の形稽古に取り入れていけばよい。

だが、それで満足な技がつかえるわけではない。必ずまた問題が発生するはずだ。連動して働くべき箇所が十分にまだ働いてくれないからである。今度はそこを鍛えなければならない。

取りあえず、まずは「足の裏」を鍛えましょう。