【第468回】  呼吸力を出すために(2/2)

相手の受けを納得させる力は、強ければ強いほどよいのであるが、質もまた通常のいわゆる腕力・体力と違っていなければならないだろう。合気道で求めている力とは、呼吸力といわれる力である、と考える。

呼吸力とは、遠心力と求心力が表裏一体の力であり、引力を備えた力であろう。今回は、呼吸力をさらに強化するにはどうすればよいか、呼吸力を最大限に出していくためにはどうすればよいか、を研究することにする。

これまでは、呼吸力で相手の手をくっつけて、相手と一体化し、そして、相手を導く、ということを中心に書いてきた。そのためには、天の浮橋に立って、接点を初めに動かさずに、その対照で、また生産びの息づかいで動かす、手や体を十字につかう、息も十字につかう、などが大事であると書いてきた。

これらの条件で呼吸力をつかうと、ある程度の力は出るし、たいていの受けの相手は納得してくれる。だが、まだ時としてぶつかったり、抑えられてしまう事もある。つまりは、呼吸力がまだ弱いということであるから、呼吸力を強化しなければならないわけである。

呼吸力を強化しなければならないことが自覚される典型的な稽古の例としては、諸手取呼吸法がある。これまでのやり方でもある程度のことはできるだろうが、時として、また相手によって、うまくいかないことも多々あり、満足はできないだろうから、その先へ進むことが必要になる。

最近、何度か試行錯誤してみたが、呼吸力を出すためには、これではないかと思い当たったことがあるので、整理してみよう。

そこで、諸手取呼吸法で説明する。
これまでは持たせた手をただ息を入れながら持ち上げていたが、もう少し息と体を繊細につかうのである。

この息を入れながら引っ張られる腕の感覚、引っ張られた腕を腰の遠心力につかう感覚が、呼吸力の感覚であろうと思うのである。実際、この呼吸力をつかうと、相手の腕力、体力にあまり左右されることがないようである。

相手とくっつき、離れにくくなるから、後は腰からの遠心力で力一杯の稽古ができるようになるはずである。そして、ここからが本格的な呼吸法、つまり呼吸力の養成・錬磨ができるようになるものと考える。

さらなる呼吸力をつけていくには、二人掛け、三人掛けで鍛えればよいだろう。