【第453回】 肩のロックを外す

合気道の技は基本的に手でかけるので、手をいかにうまく働かせるかが重要である。

手は比較的自由に使うことができるものであるから、日常的な感覚で、無意識に手を使って、稽古で技の錬磨をしてしまうことになる。だが、これまでも書いてきたように、日常的な使い方では技は効かないものである。

技をかける手には、手に最大の力がかかるようにしなければならない。その力は、体の重心であれ、体の力の抗力であれ、体の中心である腰腹からくる力である。この腰腹の力が背中、肩を伝わり、腕から手先に伝わるわけだが、日常的な手・腕のつかい方をすると、この流れは残念ながら肩で止まってしまう。せっかく腰腹から来た力が、肩で止まってしまって、手先まで届かないのでは、弱い力になってしまう。それだけでなく、肩を痛めることにもなってしまうのである。

腰腹からの力を肩で止めず、そこまで来た力をさらに増幅するためには、肩のロックを外して、手・腕を使わなければならない。

正面打ちや横面打ちで打ったり、剣を振り上げて切り下すときには、腕を上にあげ(a)、止まったところで(b)、脇を開くように肩を横にずらし(b)、さらに腕や剣を上げると、(c)肩のロックがはずれ、腰腹の力が肩を流れると同時に、腕が長く伸びる。また、肩で力が増幅され、さらに大きい力が出ることになる。

ここまでは以前に書いたが、肩にはもう一つロックがあり、それを外さなければならない。

上記の肩のロックは、腕の上下の縦の動きのためである。次は、それと十字となる横の動きに対応するものである。それは、腕を開く動きとなる。例えば、両腕を肩の高さまで上げて、内外に開閉すると、胸が180度ぐらい開いたところで腕は止まってしまうだろう。これでは手・腕が大きく回らないし、手先だけの力しか使えないことになる。

腕の可動範囲を広げ、腕を大きく回すことで、力が増幅され、より大きい力を出すには、この肩のロックを外さなければならない。

この横の動きのために、肩のロックを外すには、そのまま腕を開くのではなく、開く前に肩を上げるのである。肩を上げてから、開くのである。例えば、片手取、諸手取呼吸法でも坐技呼吸法でも、手を先に動かすのではなく、肩を上げながら、肩からつかうのである。肩からつかうことによって、腰腹からの力が倍増し、肩が自由に大きく動くようになるので、技の効き目はよくなるはずである。

一般的に肩が上がると、体が浮き上がったり、不安定になるとされる。だが、合気道の場合は、息を入れながら肩を上げるのでその心配はなく、息を入れるのはであるので、安定することになる。

技の錬磨において、技が効くためには、この縦と横の肩のロックを外して、腕をつかわなければならないことになる。

つまり、肩が縦と横に自由に動くよう、そして、使えるようにしなければならない。そのためには、技をかける際に意識してつかっていくことと、日頃から肩を縦と横に動くように鍛錬することである。縦と横ということは円であり、要するに、肩が回ることである。

肩を回して、肩のロックを外し、腕を大きく強くつかっていきたいものである。