【第416回】 魄を制するために 〜その2〜

合気道の教えでは、魄を制するモノは魂、ということである。しかし、魄にしろ、魂にしろ、まだまだよくわからないと言った方がよいほどわかっていないことなので、もう少し身近な、一般的な言葉をつかって説明してみよう。

魂とは、心とか精神とか気持ちということであろうが、ここでは心という言葉を使うことにする。そうすると、魂が魄を制するとは、心が魄の力(体力、腕力)を制するということになる。言葉通りで見れば、心で相手の力を制することになるが、もちろん役行者や安倍晴明ではないのだから、心で念じただけでふつうの人が人を倒したり、力を制することなどできるわけがない。

相手の力を制し、倒すような技を極めるためには、自分の体、力(魄)をも使わなければならないのである。

さらにもう一つ、大事なモノがある。それは呼吸、息遣いである。心は自由に、そして気ままに働くモノであり、また、自分の体も気ままに動く。この心と体を結び、同調して動かせるのが呼吸である、と考える。

魄を制するためには、この心と体と息遣いの三つがうまく働かなければならない。以下に、それらがどう働くのか、また、それらをどう使うのか、を一つの例で説明してみる。片手取り呼吸法をイメージして読めば、分かりやすいかも知れない。

この例からもわかると思うが、魄を制するため、つまり、力のある相手を制するためには、 しかしながら、最も大事な事は、心の切り替えである。これまで魄の稽古をし、魄力で長年やってきた稽古法を180度変えるのである。これまでとはまったく正反対の稽古を始めなければならないのであるから、一時は弱くなるだろうし、先に不安も持つことだろう。これは、勇気の要ることである。

しかし、合気道には物質文明を精神文明に変えていく使命があるわけだから、そのために練磨している技の稽古で、魂(心)が魄(力)の表に出、魄を制することができなければ、地球天国、宇宙楽園をつくるお手伝いもできないことになる。

難かしいことではあるが、できるだけ魄を制するための稽古をしていきたいものである。それは、力がない者だけではなく、力を持て余している人たちも求めているものだ、と考える。