【第411回】 折れない腕

合気道の相対稽古で技をかける際に、腕が折れ曲がってしまっては技は効かない。折れ曲がったところで力の流れが止まってしまい、有効な力が出ないからである。

腕が折れ曲がってしまう主な原因は、筋力が弱いことと、腕を螺旋で使わないことであるが、もうひとつ、息の使い方にもあるようだ。

技をかけて腕が折れる場合は、たいてい息を吐いたときである。特に、息を吐ききったときに、腕が折れる。もちろん、名人、達人のレベルに達すれば、息を吐こうが、吸おうが、腕など折れないが、そこまで行く途中にある者の場合は、息を長く続けて吐くことも十分にできないから、息がボツボツと切れてしまう。すると、腕が折れ、技も切れることになるわけである。

折れない腕の息づかいのポイントは、息を入れながら腕をつかうことである。息を入れるとは、息を吸うことであるが、開祖は息を吸うことを、息を入れるといわれた。また、息を吐くを、息を出すともいわれていた。

腕に息を入れながら技をかけると、腕は遠心力で手先から胸鎖関節まで一本につながって動き、強靭で柔軟な腕になる。あとは、この手と腕を腰腹に結び、腰腹で螺旋につかえば、折れにくいはずである。もちろん、技をかける相手の体力、腕力が異常なほど強い場合は、その力に負けて腕は折れるかもしれないから、絶対に折れないという保証はできない。

腕が折れないようにするためとはいえ、技をかける時に、初めから最後まで息を吸ってばかりはいられない。息は、吐いて、吸って、吐いて、を繰り返さなければならない。従って、腕を折らないようにするため、息を入れて(吸って)の前に息を吐き、吸ったあとも吐かなければならない。要は、生むすびの息使い、イと吐いて、クと吸って、ムと吐いて、スと吸い、である。

相手に接するときに、イと息を出し、相手と接したら、今度はクーと息を入れながら手をつかって技をかけ、ムと吐いて技を極めるのであるが、息は縦と横の十字に使わなければならない。これがうまく使えなければ、息を入れて腕を使っても、おそらく腕は折れてしまうことになるだろう。

息を出す(吐く)のは、縦の腹式呼吸である。天から受け入れた気と呼吸を、腹式呼吸で地に落とすのである。ノドや口から洩れてしまっては、力が集まらないし、次のクの横の胸式呼吸につながらなくなってしまう。

この胸式呼吸で息を入れながら、腕を使うのである。すると、腕は強靭で折れ曲がらなくなり、相手をくっつけてしまう引力が働くようになる。初心者は、この胸式呼吸で息を入れるところを、腹式呼吸でやるために、息が続かなかったり、大きな力を出すこともできず、腕が折れてしまうようである。

後は、ムと腹式で息を出しながら(吐きながら)技をきめ、スと吸いながら、きめた相手から離れるとよい。ともかく、息を入れながら腕をつかうようにするとよいだろう。