【第409回】 力が通る腕づかい

合気道の技は、腰腹からの力を手先に通して、相手の手や体などから相手の中心(腰腹)へ結んでかけるものである。従って、自分の腰腹からの力が、自分の手先へ通らなかったり、相手の中心まで届かなければ、技は効かないことになる。

力が通らないということは、力の通り道をブロックすることである。ブロックしているのは、通常、稽古相手ではなく、自分自身であるようだ。

相手まで力を通すためには、相手と結ばなければならないが、これはこれで容易ではない。しかし、その前に自分自身の中での力の流れをブロックしないようにしなければならない。腰腹からの力を手先に通すわけだが、これがけっこう難しいのである。それは、その難しさに気がつきにくいからである。

自分の力の流れが止まると、力むことになり、相手もそれを感じて力んでくる。すると、自分がますます力むことになる。自分の力で自分にぶつかることになるのである。

このような力みの元となるもの、力の流れを止めてしまう最大の原因は、腕づかいであると考える。腕の使い方がまずいのである。腕の使い方が理に合っていれば、腰腹からの力は止まらず、手先までスムーズに流れるものである。

それでは、力の流れが止まらない腕使いはどのようなものかというと、次の二つであると思う。

@ 肩を貫いて、肘を折らずに腕を一本にし、腰腹を中心にし、腰腹で手先を使う。
これで腕を使うと、どこにもぶつからずに、腕は動き、力が手先まで流れることを、誰でも感じることができるはずである。肘を折ったり、手先から動かすと腰腹からの力は切れてしまう。方、試してみると実感できるだろう。

A 手首は十字に使う。
技をかけるのは主に手先であるが、腕は一本で使いながら、手首だけを動かして使わなければならない。手首を使う際に、肘も一緒に動かしてしまうと、有川先生が言われた「ばらばら事件」になってしまい、力が通らず、技が効かないことになる。手首は動かせばよいということではなく、理合でつかわなければならない。それは、縦と横の十字である。

手首を十字に使うと、腕も十字に動くことになる。そして、腕は螺旋になり、力が通る強い一本の腕となって働いてくれることになる。

この一本の腕を腰から使い、手首を十字に使うようにすれば、力はぶつからずに手先まで流れ、さらに相手まで伝わることになるだろう。