【第396回】 撞木(しゅもく)の歩法

合気道は手で技をかけるので、手の使い方はむろん大事であるが、それがだんだんと技を足でかけるようになるものである。だが、そうだからといって、手の使い方をおろそかにしてよいというものではない。手の使い方をきっちり身につけ、そして、手をさらに鍛えながら、その上で今度は足を鍛え、足の使い方を身につけていかなければならない、ということである。

手は頭の働きを表わす、といわれるように、頭で考えて手を動かすことはできる。だが、足は胴体・内臓とつながっていて、頭とのつながりが手ほどはないようなので、頭で足を使うのは難しいようだ。従って、技をかける際には、頭で考えながら使おうとするのではなく、無意識のうちに動けるように、足に覚え込ませなければならないことになる。

合気道は十字道ともいわれるように、十字に体を使うことになるので、足も十字に使わなければならない。今回のテーマでもある歩法も、十字でなければならないと考える。

正面を向いて踵をつけて立てば、左右両肩の横方向と足の向く縦方向は十字になる。そこから歩を進める場合、まっすぐ直進することはできないので、撞木で歩を進めなければならない。つまり、両足にかかっている重心を片方の足に移動し、そして他方の足を撞木で進めるのである。

しかし、撞木で足を進めようとする時に、足を先に動かそうとしても、撞木では進めない。まずは、腰腹を自分の希望の撞木の角度まで外転させ、その腰腹に導かれてその下に足がきて、着地するようにしなければならない。着地した足は、上から見て、腹より前に出ては駄目なのである。足が腹より前にあると、敵に足を払われるし、また前進を阻む態勢になってしまう。

この撞木で出す足の着地は踵であり、重心は踵から小指の下の小指球、そして拇指球に移動していく。これを、足裏三点を「あおる」というようだ。

拇指球に重心がくると、重心はさらに親指に落ちる。重心が地に落ちると、反対側の足は天に上がるから、その足は自由に動けることになる。そこで、その足の踵から着いて、また同じように足裏三点を「あおる」のである。

撞木の足、また、撞木の体(足腰)を使って、歩を進めていると、体の摩訶不思議に感動するし、人体と宇宙とのつながりを感じられるようである。