合気道は技を練磨して精進していくが、そのためには、身体のすべての部分を、理に合うようにうまく使っていかなければならない。また、上手に使うことによって、身体のすべての部分が鍛えられるのである。
身体を鍛える場合だが、一般的には、身体の捉え方が大ざっぱなままで鍛えるものだ。まず、入門当初などは、手(腕)、脚、腰、腹くらいで、非常に大ざっぱである。次に、もう少し進むと、手でも手首、肘、前腕、上腕、肩等と、細かくなっていく。もちろん、このような細分化は必要である。例えば、手を鍛えるにしても、漠然と手を鍛えても筋肉がついて太くはなるだろうが、繊細な合気道の技をつかえるような手にはならないからである。
手ならば、さらに細分化して鍛えなければならない。例えば、手の手首から先を見ても、3つの関節からなる指があり、その指が五本ある。また、手の表裏である手の甲と手の平がある。さらに、手の平には、五本の指の腹、掌(たなごころ)、そして手刀がある。
手刀がしっかり使えなければ、うまくいかない典型的な技(技の形)としては、正面打一教がある。まず相手の打ってくる腕を、この手刀で抑えなければならない。次に、その反対側の手の手刀に、相手の上腕を入れてしまう。そして、最初に腕を抑えた手刀で相手の腕をすべらせながら抑え(写真)、相手の上腕が入っている手刀を落とし、最後に左右の手刀で相手の腕を畳におさえるのである。要は、正面打ち一教は、いってみれば「手刀の技」であり、この手刀がうまく働かなければ、技がうまく効かないことになるはずである。
手刀をうまく使わなければならない技(技の形)としては、横面打ちもある。相手が横面で打ってくる手を、この手刀で受け、くっつけて誘導するのである。この手刀がうまく働かないと、相手を弾いてしまったり、相手と一体化できないので、横面打ちの稽古にならないことになる。
もう一つ、突きに対してはこの手刀をしっかり使わなければ、抑えることはできない。手刀で相手が突いてくる腕をくっつけて結んでしまうと、そこから入身投げ(表)に入ったり、小手返しで返したり、隅落としで落としたりできるのである。
この他にも手刀をうまく使わなければならない技はあるわけだが、厳しくいえば、この手刀がうまく使えなければ、どんな技もうまくいかないであろう。取りあえずは、この手刀のつかい方が分りやすい正面打ち一教と横面打ち(例えば、四方投げ、すみ落とし等)で、手刀を鍛えるのがよいだろう。
正面打ちや横面打ちで手刀を鍛えるにしても、なかなかうまくいかないであろう。手刀が働くためには条件があり、その条件を満たさなければならないからである。例えば、