【第381回】 指の力

合気道は武道であり、相対で技をかけ合って、技を身につけながら、体を鍛え、力をつけていくものである。従って、技をかけるには、力が強い方がよいことになる。

力が強いとは、押したり引いたりする力が強い、持ち上げる力が強い、引き落とす力が強い、などであり、どれくらい強いかを体で感じ、分るものである。だが、もうひとつ、相手の力がどれだけ強いか分るものがある。それは、指の力である。すなわち、指で絞める力である。

呼吸投げ等でうまく投げることができても、一教、二教、三教、四教の押さえ技できちっと技をかけるのが、なかなかうまくいかないことがある。その主な原因は、指の力が不足しているからと考える。

指の力が弱い原因としては、

  1. 体全体の力がまだ十分に強くない
  2. 指、指の関節が固い
  3. 前腕が十分に鍛えられてないため、十分な力が出ない
等があると思う。 力の強い人は、腕をつかんだだけでも、その力の強さが分るだろう。また、一教〜四教などの押さえ技、小手返しや四方投げ等で、指で絞められても、相手の力の強さを実感する。二教や三教などでは、相手の指がこちらの手に接触しただけでその強さが分ってしまうものだ。一番印象に残るのは、故有川師範の指の力の強さであるが、まさしく万力の力といえるような、強烈な指先の力であった。

特に、二教と三教、それに小手返しは、指の力が弱いと効かないものである。技が効かないのは、指の力に問題があるはずだから、指の力を強化しなければならない。

指の力を強化する、指の絞りを強くする、指から強い力を発するためには、次のようなことを注意して稽古したり、鍛錬しなければならないだろう:
  1. まず、指先と腰腹を結んで、その結びを切らずに指を使う。
  2. そして、指先から動かさないで、腰腹で指先を使う。
  3. 指を絞めたり、使う際には、表層筋ではなく、深層筋を使う。
  4. 指先に力を入れる際は、その上の関節、つまり手首の上の前腕を使うから、その前腕を鍛えなければならない
  5. 指の関節は柔軟でなければならないから、指の柔軟運動をする。各指の関節が鋭角になるように、圧したり、伸ばしたりするのである。それを極限まで、そして、毎日やることである。
  6. 最も大事なのは、指を鍛錬するように稽古することである。例えば、一教〜四教で指が締まるようにしっかり稽古するとか、諸手取りで相手の腕を指でしっかり絞って持つようにするのである。
指の力が強化されると、体の力を効率的に使えるようになるから、技は変わるだろう。それを楽しみに、指の鍛錬をしたいものである。