合気道では力が要らない、とかいう迷信を信じたり、力を悪者扱いしたりする稽古人は多いようだが、武道である合気道でも、力は大事である。力はあればあるほどよいだろうし、修行の最後まで養成し続けなければならない、と考える。
合気道で、力を軽視するのは、力とは何か、力の出し方、力の使い方、などがよく分らないからだと思う。そこで、今回は、力が大事である、ということを確認してみたいと思う。
まず、力とはなにか、である。軽視されがちな力とは、日常で使っている力であり、いわゆる腕力と考えられているものである。腕の力とは、肩から手先までの力、と思われているようである。この力は体力に比例した魄の力であり、体の大きい、腕っ節の太い人が有利な力で、外見からその力の強さが想像がつくものである。
合気道ではこの力を養成しているわけではないが、この力もある程度までは鍛えなければならない。しかし、合気道では、この力にだけ頼っているのでは駄目だ、とするのである。
合気道で使う力は、腰腹の力である。腰腹の力を、手先まで伝えて使うのである。この力の威力は、諸手取り呼吸法でわかるだろう。
腰腹と手先がつながり、腰腹の力が手先に伝わるようになれば、手・足・体、それと息を十字に使えば、呼吸力が養成されるのである。この呼吸力こそが、合気道の力といえよう。この呼吸力は強力であるとともに、遠心力と求心力を兼ね備えた、相手を引きつけてしまう引力をもつ力でもある。
次に、力の出し方である。腕力を使うなら、立っていても、坐っていても力は出せるが、腰腹からの力を出すためには、どうしても地球の力をお借りしなければならない。腰腹は、体の重さを脚を通して地球に落とし、地球からその抗力を受け、その力(エネルギー)を手に伝えて、力を出し、技をかけるのである。
その際、大事なことは呼吸である。地球に体重を落とすときは息を吐き、地球から力を受け取るときは、息を入れるのである。そして、もうひとつ大事なことは、手足を右左規則正しく、陰陽に使うことである。
二教裏などでは、地球の味方、呼吸、手足の陰陽がなければ、相手がよほど弱くないかぎり、効かないだろう。
最後に力の使い方である。これにはいろいろあるので、思いつくままに箇条書きしてみよう。