【第36回】 足

合気道を始めた頃は、手足の使い方など気にせずに稽古をするものだ。だが稽古を進めているうちに、だんだん手さばきが気になって注意するようになり、師範や先輩の手の使い方を真似したりするようになる。手の動きや使い方としては、目でよく見て、頭で記憶し、思考錯誤して、試していけば、手は案外思うように使えるようになるものだ。

しかし、技を上手く使うには手だけを注意していては駄目である。もうひとつ大切なのは足の使い方である。
ただ、足は手と違って、頭で思ってもなかなか思い通りには動いてくれないものである。手は頭の働きを伝えられるが、足には手ほどは伝えることができないようである。従って、足は意識して、本能的、合気道的、武道的に動くようになるまで鍛錬しなければならない。

足は手と同様、身体の末端部であり、弱い部位である。それを強く使うためには腹と結ぶことである。例えば、着地したとき腹に全身の力がズンとくるように連動して使うようにするのである。そのためには着地する足は身体の真下にあるようにし、足の進め方は、所謂、ナンバとならなければならない。

ナンバは足と腰と、肩が時間差を伴うものの一緒に右、左と進み、そして陰陽に使うことである。歩を進める時はかかとから進め、着地したとき足にかかる全身の力は身体の表側である腿、太腿、腰へくるようにする。合気道を長年稽古すると、お腹ではなくこの腰の部分に筋肉がついてくる。開祖やその高弟の師範の腰は大きかったのはこの関係からだろう。

足を使う稽古は、道場での稽古ではなかなかできないものである。一番いいのは、道を歩いているとき意識して歩く稽古をすることである。ナンバの歩き、重心の落とし方等であるが、注意するポイントとして、先ず、音がしないように歩くことである。足をすって歩くのではなく、足を上からそっと置くように歩くのである。地球にやさしく、地とむすぶつもりで歩くことが大切である。 また、呼吸に合わせて歩くことを意識することも大切である。着地するとき、息が腹に入ってきて体が安定し、柔軟になり、重くなる。

慣れてくれば、呼吸に合わせて、速く歩いたり、ゆっくりと体重をかけて歩いたり、斜めに歩く忍者歩きをしたり、足が手とおなじように自由に動くようになるまで稽古するのがよい。出来れば山でこのような歩行の稽古をすれば効果的である。先人が言うように足に目が付いているようにならなければならない。