【第350回】 足づかいの法則
前回の「宇宙の法則を身につける」に引き続き、この宇宙の法則を身につけるとはどういうことか、そして、どのようにすれば宇宙の法則が身につくのかを、もう少し掘り下げ、具体的に書いてみよう。
合気道の相対稽古で技の練磨をする場合、技は手足をつかってかけあう。手の使い方も大事だが、足づかいも大事である。「上手は技を足でかける」といわれるように、足づかいは大事であるので、今回は足づかいの法則について書いてみることにする。
人には、2本の足がある。よく考えると不思議であるし、創造物の最高傑作の一つであるとも思う。タコは足が8本、イカは10本、ムカデは1000本などと言われるが、人の足は2本だけである。
稽古では、この2本の足を法則に則ってつかわなければならないが、その法則をいくつか紹介したいと思う。
- 2本の足を左右交互に、規則的につかう:技をかける際は、足は歩く時のようにつかえと言われている。右が出たら左、次は右、そして左、右・・・と規則的に順序よくつかうのである。これを例えば、左、左・・などとつかうのは法則に反するので、技がうまく効かないことになる。技が止まったり、相手に引っかかったりして、うまくいかない場合は、たいていこの法則に反しているのである。例えば、右の足をつかう順番のところを、反対の左をつかってしまっているのである。
右、左といくべきところを、左、左になれば、スキップする足づかいになってしまうから、歩く足づかいにならず、法則に反することになる。
なお、足を左右交互につかうということは、体の重心を左右の足に移動することである。足だけが出て重心がその足にのっていなければ、足が進んだことにはならない。
- 体の中心の腰腹と結ぶ:足は、手と同様に、体の末端なので、腰腹とのつながりが難しい。万有万物は、宇宙の中心である一元の元と結んでいる。小宇宙の人の体の中心は腰腹であるから、この中心と末端の足は結ばれなければならないことになる。腰腹は足と結ぶようにしなければならない。そして、腰腹と足をつなげたら、最後までその結びが切れないように、足をつかわなければならない。
- 腰腹で足をつかう:上記の、足を腰腹に結ぶことと関連して、体の中心である腰腹で足をつかうようにしなければならない。宇宙では、中心にあるものが周りのものを動かしているはずだから、周辺のものが中心を差し置いて動くのは、宇宙法則違反ということになる。
稽古でも、腰腹で足をつかわなければならない。足から先に動いてしまうと、力が出ないし、技も出ないものである。腰が動いてから、足が動くのである。
- 足の表をつかう:宇宙ができるまでは、無性の神、一人神など、表裏のないものがあったようだが、その後の宇宙の万有万物には、すべて表と裏があるということである。そして、仕事をするのは、表である。それは、自分の体でもわかることである。体の裏をつかってやってしまうと、力は出ないし、技は効かないし、体をこわしてしまう。二教が効かなかったり、膝を痛めたりするのも、体の裏をつかっていることが原因であろう。
足の表とは、太腿の後ろ側のことである。腰からの力は、この側を通さなければならない。裏である膝側を通すと、法則違反で、膝を痛めることになる。
- 十字でつかう:宇宙は、縦横十字で営まれているという。それに合うように、足も十字につかわなければならない。足は、上下方向の縦と、それに対する地面に沿った横方向に機能する。足(下肢)が十字に機能していることは、足首、膝、股関節の個所がおのおの十字に働いていることでわかるだろう。椅子にかけて見てみると、それぞれの関節が直角になるので、一層よくわかる。
天地の縦に対して、地面に沿った横の動きが十字であるが、横の足づかいとして、もうひとつ法則がある。それは、撞木の足づかいである。前に出した足と後ろの足は、常に十字になっていなければならない。撞木で足をつかわなければ、三角法で進めないし、円の動きもできないことになる。
- 十字は縦からつかう:イザナギとイザナミが地上に降りる際、イザナミ(横)がイザナギ(縦)を差し置いて声を発し、回り始めたので、ヒルコが生まれてしまったと戒めている。手の使い方同様、足を進める際も、先ず縦(上下)に力と息と気持ちを入れ、その後に、反対の足を横に進めなければならない。初めに横に動いてしまうと、相手に飛ばされたり、力を出し切れないものである。
足づかいの法則はまだまだあるはずであり、さらに探し続け、身につけていかなければならない。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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