【第34回】 肩

合気道の稽古で技をかける場合、手を使うのが多いので手の動きには注意するものの、その他の体の部位にはあまり注意しないように見受ける。注意しないということは、その部位を使っていないということでもある。

合気道のどんな技も、体の部位のすべてが上手く機能しないと技は効かない。合気の体をつくるためには、体の部位を分解して鍛え、技をかけるときは各部位を統合して使わなければならない。よほど注意しないと、各部位がくっ付き合った体のまま、手先などの部分を使ってやってしまうことになる。

肩が上手く機能しなくて上手くできない典型的な基本技のひとつに、一教裏がある。一教裏が出来るように肩を上手く機能させるためには、肩と胸と腹が面になるようにし、肩と足と手が連動して左右交互に陰陽で使い、肩を貫(ぬ)かなければならない。肩が上手く機能すると、この一教裏は相手の腕に接した瞬間は多少力が要るが、その後は相手が自分から倒れこんでくるので、ほとんど力は必要なくなる。これが、合気道は力が要らないと言う事ではないかと思う。

合気道の稽古法ですばらしいことの一つに、体のいろいろな部位を掴んで攻撃するものがある。合気道ではこの攻撃法は、スポーツとは違って、すべての攻撃を想定して対処するように考えられているため、肩や胸やいろいろな体の部位を掴むわけであるが、それは掴まれた部位を主に使うことによりその部位の機能の活性化を図ろうとしているのである。つまり、肩取りは肩の機能を活性化する稽古法なのである。肩をつかませて技をかける場合、手でむしりとって技をきめるのではなく、肩を手のように使わなければ、肩取りの意味がなくなってしまう。

肩が上手く使えるようになったかどうかを自分で知るには、前述の一教裏の他に正面打ちなどからの入り身投げが上手くいくかどうかで分かる。入り身投げも肩が上手く使えないと、入り身にならず、肩を切られたり、相手と四つに組む形になってしまう。肩が上手く、自由に使えるようになれば、太刀取りも出来るようになるだろう。