【第339回】 部位を鍛え繋げてつかう

合気道で技の練磨をしていく上では、体の各部位を総動員して最大限働いてもらわなければ、真の力は発揮されず、技も身に付かない。

そのためには、総動員する体の各部位が働けるよう、まず、その各々を鍛えなければならない。鍛えるとは、強くそして柔らかくすることである。つまり、強靭で柔軟にすることである。

一般的に、われわれ合気道の稽古人は、体の末端の部位から鍛えていくようである。まず、手首を鍛える。二教などで、手首を痛めないようにするためである。次に、肘である。三教や交叉取りなどで、肘を鍛えるのである。その次は、肩である。しっかりした肩をつくり、肩のカスを取り、そして、肩を貫かなければならない。肩甲骨のカスをとって、動く活動範囲を大きくしていくのである。この頃になると、腕が太くなってくるはずだ。

たいていの場合、体の末端から鍛えているとは意識してないであろう。だが、相対稽古で技を使おうとしている手の動きをみると、初心者ほど末端の手先から動かしている。これは、無意識だが末端から鍛えていることになる。

足の方、下肢の各部位も、鍛えなければならない。足の裏、足首、膝、ハムストリング、股関節の足と腰の部位である。

鍛えるというのは、筋肉をつけて強靭にしたり、カスを取って、柔軟にするだけではない。その各部位を螺旋や十字や陰陽など、つまり宇宙の営みに則った法則に合うように、つかうことでもある。

手を十字に反しながらつかう、足を撞木で十字につかう、手足を陰陽でつかう、等などである。これも、各部位を鍛えることになる。

しかし、各部位を技の練磨でつかう場合、各々をバラバラにつかっていては大きい力は出ないし、技にもならない。すべての部位をすべて繋げ、体全体として、統合してつかわれなければならないのである。

手先から出る力は、地からの抗力が腰腹に集まり、それが胸にいき、そこで胸郭を広げることによって、腰腹に圧がかかり、その力は肩甲骨を通り、肩から腕、手へと伝わっていく。

ここで重要なのは、肩が貫けていることである。肩が貫けていなければ、力が肩で止まってしまうから、腰腹からの力が手に伝わらないことになる。しかし、肩を貫くのは容易ではない。だが、合気道は十字道とも云われるように、手を十字に使うと、肩は容易に貫け、腰腹の力をつかえるようになる。

各部位を繋げ、統合してつかうためには、まず、手足を螺旋でつかわなければならない。なぜならば、手首、肘、肩はそれぞれ独立していて、お互いに蝶つがいで繋がっているようなもので、通常はその蝶つがいを支点にパタン、パタンと折れ曲がって働くものである。

その各々を一本に結んで、統合して働いてもらうためには、螺旋によって動かすしかないのである。蝶つがいをロックして一本に繋げるのは、螺旋ということになる。

もうひとつ、各部位を統合して働いてもらうためには、呼吸が大事である。息の出し入れを間違えれば、手は折れ曲がってしまう。特に、吸う息が大事である。

さらに、天の上下の縦の息と地の横の息に合わせて、部位を統合して働いてもらえば、各部位が働き、大きな力が出る。特に、胸郭を広げる横の呼吸をつかうと、体の各部位が活性化し、大きな力、呼吸力が出せる。これは、腰腹からの力以上の力である。だが、この呼吸力を、胸郭を広げて出すようにするためには、その前に腰腹から強力な力が出るようにならないと難しい。