【第333回】 骨盤周辺筋肉

人の身体の中心、要(かなめ)は腰である。力の出入りの源も、この腰といえるだろう。腰の筋肉から大きな力が出るはずである。

腰というのは定義もあるだろうが、ちょっと漠然としているので、もう少し具体的に「骨盤周辺」としてみる。技をかける場合にこの骨盤周辺を意識してやると、力が出るし、安定性もあるようである。

初心者はこの骨盤周辺筋肉をしっかり動かして使うことが少ないようだ。それ故、骨盤周辺筋肉が凝って動きが悪くなり、力が発揮されないし、技が効かないのではないだろうか。

骨盤といっても単純なものではなく、いくつかの骨の組み合わせでできている。この骨盤の周辺筋肉でも、大きいものや小さいものがいくつも組み合わさっている。稽古で骨盤や骨盤周辺筋肉をつかう場合でも、骨盤と背骨、太腿のあたりを結んでいる大腰筋ぐらいは意識できるだろうが、その他の筋肉は中々意識できないだろう。もちろん、知っていた方がよいだろうが、武道の稽古では、今この筋肉が働いている、今度はこの筋肉、などと考えている余裕はないだろう。

それより、骨盤周辺筋肉を十分につかい、働いてもらうようにした方がよいと考えるので、大腰筋、腸腰筋、骨盤低筋群等などひとつにまとめて骨盤周辺筋肉として扱うことにする。

骨盤の周辺にはたくさんの筋肉があって、腰や膝と繋がっており、足の運動に関連する筋肉が集まっている。骨盤周辺筋肉がしっかりしていなければ運動能力、とりわけ足の運動能力は衰えることになるから、鍛えていかなければならない。

例えば、大腰筋は30代から徐々に衰えていき、50代の筋肉量は20代より約30%減、それ以降は毎年、年をとるごとに1%ずつ減るといわれる。しかし、年を取っても筋肉はつくようである。どれぐらい筋肉がつくのか、いつまでつくものなのかは分からないが、60、70歳までは間違いなくつく。80,90歳まで筋肉がつくのかどうかは、まだ分からない。(実験中)

骨盤周辺筋肉を稽古でつけるのは、そう難しくないだろう。大事なのは、技を使うときに、この骨盤周辺筋肉を使うことである。骨盤周辺筋肉と身体の末端を結んで、身体の中心である腰、身体の表である腰からつかうのである。また、これに呼吸を合わせ、吐く吸うを間違わないようにする。そして、意識と息をいれ、骨盤周辺筋肉で技を練磨していくのである。

合気道では、骨盤周辺筋肉をさらに鍛える稽古法がある。それは坐技である。正座で座ったり、つま先を立てた跪座で技をつかったり、呼吸力の鍛錬の呼吸法をやるのである。

坐技は立ち技と違い、足が自由に動かないので、身体が動きにくく、力が出にくい。強い力を出すためには、骨盤周辺筋肉を使わなければならないので、骨盤周辺筋肉の鍛錬になるのである。

人は自分自身のことは、思っているほど知らないものである。力がどこから出てくるのか、どの筋肉を使うのか等など、知らないでやっているようだ。せっかく使わせてもらっている身体だから、身体のすべての部分を意識できるようにし、そして感謝し、今後ともご協力をお願いするのがよいだろう。一度には無理なので、少しずつやっていくしかない。今回は、骨盤周辺筋肉への感謝とご協力へのお願いであった。