【第323回】 接点を支点で

合気道は技の練磨を通して精進していくが、技は思うようにつかえないし、相手にもうまくかからないものである。うまくかからない理由は無数にあるだろうが、その一つに、相手と接する接点がうまくつかえてないことにあると思う。

相対稽古で相手に技が利く、あるいはかかるためには、少なくとも次の条件があるだろう。

相手と結び、そして、その結びが切れないことによって、自分と結んでいる相手は自分と一体化し、相手も自分の手足の一部として動いてくれる。相手と結ばず、また、その結びが切れれば、相手は相手にもどり、自分と相手という二つのものとして分離し、独立してしまうことになる。すると、そこにお互いの意思が働いてしまう。お互いの意思が異なれば、往々にして争いが起こることになる。結びが切れれば、相手が自由になるわけで、自由の身に技などかからないので、他の手段に訴えることになってしまうわけである。

接点は大事である。接点は相手と結ぶところである。が、また、接点は支点ともなっているからである。つまり、接点は支点としてもつかわれているのである。従って、この「支点」の使い方が、技をつかう上で重要なのである。

支点は大切につかわなければならない。例えば、接点である支点を押したり、引いたり、上げたり、下げたりして動かさないことである。また、支点である接点を、相手から離さないことである。つまり、結びを切らないことである。

次に、支点は微妙に移動しているので、それに気づくこと、さらに、その支点の移動を意識してできるようにすることである。例えば、片手取り呼吸法で手首を取らせた場合、相手は手の平全体でこちらの手首を持ってくるが、こちらの手を縦から横に十字に反すと、その支点は相手の手の小指側に移動、また手を縦に反して振り上げていくと親指側に、切り下ろす時はまた小指側に移動しているはずである。

そのためには、まず自分の手首を相手の手の平で掴ませたら、親指を支点として小指側を横に反し、次に小指を支点に親指を反しながら手の平を立て、小指に腹の力をのせて切り下ろす。

切り下ろしていくと、腕が相手の肩か首に触れる。次はそこが支点になるので、その支点を動かさず、息によって肩甲骨を抜き、体重が沈むことによって、自分の全体重が相手にかかるようにする。相手は倒れることに同意せざるを得なくなり、自ら倒れるはずである。

最後の肩や首が支点になるときではないのに、それ以前に支点を動かしてしまうと、相手を逃がしたり、離してしまうことになる。これでは、技にはならない。支点を動かすのではなく、他の個所、つまり対極をつかわなければならない。

ただし、支点を動かさずに技をかけたり、支点を移動しながら動くのは、容易ではない。誰でもはじめからできるわけではない。それができるようになるには、次のような条件があると思われる。 接点である支点をうまくつかうためには、 ことだと考える。特に、支点の移動はそれがないと、うまくできないはずである。

技をかけるに際しては、支点は手だけではない。足も支点になる。従って、支点の足も、接点である地を蹴ったり、圧したり、滑らせてはいけないことになる。足も腰腹と結び、地に圧を掛けないよう、接点・支点を大事にして移動しなければならない。これを、天の浮橋に立つとか、天の浮橋を進む(新語)といってよいだろう。