【第313回】 歩法とナンバ(後篇)

現代の歩法は、少しでも楽をして力を使わないようにするか、あるいは時間に追いかけられているか、のようだ。しかし、この歩法で武道である合気道はできないだろうし、できたとしても違うものになるはずである。

合気道がつくられた時期の歩法は、いわゆる「ナンバ」であったはずだから、技はナンバの歩法でつかわなければならない。しかし、これだけでは、ナンバをつかわなければならない説得力としては弱いだろう。ナンバでないが、俺は相手を吹っ飛ばしているから、ナンバなど関係ないという人もいるだろうから、ナンバでなければならない、決定的な根拠をあげなければならないだろう。

何度も書いたことだが、まず足は左右でも右左でも、交互に規則的に動かなければならない。これは法則と考えてよいはずである。法則であるから、「技」であるといえるかもしれない。ともかく、足は右が動いたら、次は左、そして右、左、右・・・と動かなければならない。

通常、道を歩くときは、この歩き方をみんな問題なくやっているわけだが、技の稽古になると、この法則が破られてしまうようである。いろいろな原因でこの法則が破られるのだろうが、町を歩くときはこの左右の法則で歩けるのだから、やろうとすれば稽古でもできないはずはない。

この左右交互の規則的な歩き方が身に着かないと難しいが、次に手を足と同じように、規則的に左右交互につかわなければならない。これも法則であり、技であるはずである。

これは、足遣いより難しい。はじめのうちはよほど意識をいれ、相手をやっつけようという雑念を消し、自分の心身を統合してつかわないとできないだろう。

手は右を陽としてつかったら、その次は、陰で控えていた左を陽でつかい、右、左、と陰陽で規則的につかっていくのである。足と同様、手も左右を規則的につかわなければ、動きは止まってしまい、技がうまくかからないことになる。技をかけて、うまくいかない大きな要因である。

足が左右交互に規則的につかえ、そして手も同じようにつかえると、足と手の左右が規則的に交互に動くことになる。合気道の稽古では、右の足が出て、左の手を出すことはない。片手取りで相半身でも逆半身でも、足と手は同じ側が出るはずである。

スタートは足と手は同じ側で、あとも足も手も左右交互に陰陽で変わる。だから、足と手は同じ側が陰陽で交互に一緒に動くはずである。つまり、ナンバの動きになることになる。必然的にナンバにならなければならないのである。

ということは、技をナンバでつかってないという場合は、足が左右交互に規則的に動いていないか、手が左右交互に規則的に使われていない、もしくは足と手の動きがずれているということになるだろう。

ナンバで動けるような稽古をしなければならない。