【第31回】 肩を貫(ぬ)く

稽古で相手を投げたり、押さえに入るとき、力が肩で止まってしまって、肩から技をやってしまうことがある。それでは、相手と結ぶことができないで、はじき飛ばしてしまうことになる。そういうことを長年続けていると肩を痛めて、いわゆる四十・五十肩になってしまう。
力が肩で止まってしまうということは、腕から肩までの力しか使っていないので、下半身や腹からの力を使っていないということになる。

肩を貫(ぬ)く稽古で分かりやすいもののひとつは、片手取り呼吸法の稽古である。相手の首に自分の腕がぶつかったとき、そのまま力で倒すのではなく、接点をくっつけたまま、手先を真上に上げるようにして肩を貫く。肩を貫くと相手の力が抜け、自分の正面に崩れてくる。そこで崩れた相手を自分の腹の真下に落とす。このとき相手を倒している手は腹と結んでいるので、全体重がこの手にかかって重い手になる。

肩を貫く感覚がつかめたら、どの技をする場合にも肩を貫いてやる。四方投げでも、一・二教・三教でも、入り身投げでも、ぜんぶ肩を貫いてやらないと、実際はその技が効かず、死んでしまう。

一人稽古でも肩を貫く稽古を意識してやらないと、肩を壊すことにもなりかねない。木刀の素振りでも肩で止めてやるのではなく、肩を貫いてやらなければならない。貫くためには剣を振り上げたとき脇を開きながら剣を上に上げるといい。振り下ろすときは脇を締めながら体からの力を体の中心から剣先に集めると、肩ではなく、体の力が剣に集中できる。

肩が貫けると自分の腕の重さを感じるようになる。逆にいうと、自分の腕の重さを感じられなければ、肩が貫けていないということになる。