【第300回】 基本準備動作と技の相乗関係

前回の第299回「基本準備動作を見直す」では、基本準備動作の重要性と見直しの必要性を書いた。

今回は、基本準備動作が技のためにどのように大事なのか、また、技を身につけることによって基本準備動作がさらに向上する「基本準備動作と技の相乗関係」を、いくつかの例によって書いてみよう。

基本準備動作の稽古もいろいろあるが、その内のいくつかは、その基本準備動作ができるようになると、それに従って技がそれ相応にできるようになる、という関係にある。技(法則)を見つけて、それで基本準備動作をやれば、以前とは違った稽古になり、効果も違ってくる。基本準備動作と技の稽古の関係が、相乗効果を生み出すのである。

まず、基本準備動作の手首関節柔軟法を例に上げよう。手首関節柔軟法には、「小手廻し法」(二教運動)、「小手返し法」(小手返し運動)、「小手ひねり法」(三教運動)等々あるが、はじめの内は一方向にだけ動かすものである。

技の稽古を通して技を身につけると、これがそれまでの一方向からの二方向に変わるはずである。横に絞り、そこから縦に絞りながら落とす。または、縦から横方向に十字(直角)に力を加えるのである。

技は十字に掛ける、手や足も十字につかわなければならない、という「技」(法則)が身についたら、基本準備動作も十字で行わなければならないと思うのである。鍛えたり、カスをとって柔軟にするには、十字でやらなければならないようである。一方向だけの力では、それが難しい。

次に、息づかいである。同じく手首関節柔軟法の例でいうと、技を身につける前の基本準備動作では、一方向だけに下ろしたり引いたりする上に、息を吐きながら絞っているはずである。

だが、技を身につけて、動きに息を合わせるのではなく、息で体を動かすようになると、手首関節柔軟法での息づかいも変わってくるのである。つまり、先ず息を入れ(吸い)ながら、縦か横に絞っていき、それ以上進まないところからは、息を出しながら、十字に方向転換して絞っていくのである。

これは、技をかける際に、息を入れると体や筋肉が柔軟になり、相手と一体化しやすいことからくる。この息づかいで手首関節を柔軟にしていけば、なまじ稽古相手が手首などを締めてくるよりも厳しく鍛錬できて、技の稽古にもその成果が現れてくる。

三つ目は、典型的な「呼吸力養成法」を取り上げなければならないだろう。これは何度も書いていることだが、これがしっかりできないと、技など使えないものである。基本準備動作が十分にできなければ、技はうまくいかないという、最もよい例だろう。

実際、呼吸力、とりわけ「諸手取り呼吸法」ができるようになると、技遣いも変わってくる。技遣いが変わるということは、呼吸力以外の技要素(呼吸、十字、螺旋、陰陽等など)も身につくことになるから、「諸手取り呼吸法」をやっても、それらの技要素が加わり、さらに変わっていくことになる。ここにも、「呼吸力養成法」(「諸手取り呼吸法」)と技との相乗効果があるわけである。

これ以外にも、「基本準備動作」と技の相乗関係はあるが、いづれにしても「基本準備動作」にもどり、原点に返って稽古し、そして「基本準備動作」と技が相乗関係になるよう稽古をしていくべきであろう。