【第287回】 大 殿 筋

合気道の稽古を続けていると、体に筋肉がついてくるが、その内で特に目立つのは、先ず、手首、腕、首、そしてお尻であろう。

手首は二教などで太くなるし、腕も引っ張られたり抑えられたり、力一杯技をかけあうので、丸く太くなってくる。首も受身で頭を打たないように守らなければならないので、太くしっかりしてくるだろう。また、受身を取ったり、技を掛けている間に、太腿(大殿筋)も鍛えられて太くなる。

大殿筋はお尻にある大きな筋肉である。骨盤のうしろから太腿(ふともも)の横まで伸びていて、上半身を支えるとともに、上半身と下半身をつなぐ役割をしている。大殿筋の主な働きは、股関節を伸展し、外旋することである。

大殿筋ができてくると、お尻を触ってみて筋肉ができているのがわかる。この大殿筋(含む、中殿筋、小殿筋)は、歩を進める際、体重の抗力を吸収するように股関節に働きかけるようだ。

この筋肉ができてない(弱い)と、腰(腰椎)に直接力が加わるようで、腰を痛める。また、膝に体重を直接かけてしまうので、膝もいためることになるようだ。

手でモノを持ったり、技をかけて力をつかう時も、この大殿筋と繋がっているようだ。このように、大殿筋は上半身と下半身をつなげる役割をもっている。

大殿筋ができてくると、腰と膝が楽になってくる。腰や膝に負担がかからなくなるらしく、腰や膝を痛めることもなくなるようだ。逆に言うと、膝や腰を痛めるのは、大殿筋が弱いか、使用してないのかもしれない。

また、大殿筋が弱いと、太腿の前面の大腿四頭筋などが発達していても、力が発揮できないものだ。

大殿筋の下にある中殿筋は、体の姿勢の安定性を保つ働きがあって、ダンスのときによく使われるという。それに、高齢者が大股で歩けなくなってくるのも、この中殿筋が弱くなるからだそうである。

股関節を柔軟にしていくと、大殿筋は発達し、柔軟になるようだ。技をかける際には、足の重心の移動で股関節を柔軟にするのがよい。そのためには、体は一軸で、腹は重心を落とす足の上にくるようにし、膝が前に出ないように下肢は垂直にして、腰を落とすようにする。

稽古で歩を進める時は、着地足の衝撃を大殿筋で吸収し、手に集まる力も大殿筋に繋げるのがよいだろう。つまり、稽古をしていて、大殿筋ができてこないとすれば、体のつかい方を間違っているかもしれないので、再検討する必要があるだろう。稽古をすればするほど、大殿筋は発達するはずである。

股関節を柔軟にするのは四股がよいが、四股を踏んでいると大殿筋は太くなる。また、開脚で股関節を柔軟にして、大殿筋をつくるのもよいだろう。