【第286回】 脊椎(せきつい)

前々回から、人間は有機体であり、体の各部位は、体全体に有機的につながっているということを書いてきた。そして、数回にわたって「頭」「首」「背中」を、武道の体と合気道の技との有機的関係で書くことにし、前々回は「頭」、前回は「首と顎」について書いた。今回は背中であるが、特に「脊椎」という題で書いて見ようと思う。つまり、脊椎は体全体と有機的な繋がりがあり、故に合気道の技遣いに関係すると考えるからである。

脊椎は、脊柱ともいわれるし、一般的には背骨といわれているもので、身体を重力から支える役割があるといわれる。

脊椎は、耳穴のすぐ近くからはじまり、尾?(てい)骨まで長く一本に続く骨である。成長とともに脊椎は彎曲し始め、頸椎が前彎、胸椎が後彎、腰椎が前彎し成人のようなS字状のカーブを描くようになる。これは、直立二足歩でバランスをとるために必要となる。

脊椎は、体重を支えたり、立ったり、座ったり、走ったりして動く際に、バランスを取ったり、飛んだり跳ねたりする際の衝撃を吸収する役目があるようだ。合気道の技の練磨でも想像以上の大事な役割を果たしているように思える。

合気道の稽古で、歩を進め、技をかける際、姿勢を崩さない正しい姿勢でなければならない。まず、骨盤の上に脊椎をしっかり固定しなければならない。そのためには、脊柱起立筋などを鍛えなければならないだろう。また、脊椎の正常な彎曲を保ちながら背部を真っ直ぐに保ち正しい姿勢を維持しなければならない。

脊椎は歪まないように、長く使わなければならない。耳穴のそばから尾?骨まで一本につなげて使うようにしなければならない。一本につながれば、各部位が有機的につながる。足底の力は耳穴の辺りで感じるだろうし、頭の重さは足に感じるはずである。

そうなると、脊椎と首と頭が有機的につながったことになる。頭の位置や角度は首に影響を及ぼし、そして脊椎にも及ぶということになる。アレキサンダー・テクニークが提唱している頭と首と背中の関係は、合気道でも大いに研究してみる必要があるだろう。