【第27回】 肩甲骨

人は生まれたときから手で仕事をしてきたし、手に絶大な信用をおいて使ってきている。そして手は何でもできると思い込み、手・腕を酷使したり、過信するようになっているので、合気道の稽古でも技をかけるときに手先でやってしまう。そして、上手くいかないのは手や腕が弱いからだと思うようだ。

技を上手く決めるには、体のエネルギーを如何に効率的に使うかにかかっている。技を掛けるときどうしても手先に力を入れてしまうが、これでは大した力やエネルギーが出ないので、効率的ではない。効率的な力の出し方とは、体の内から外に出すことである。何故ならば、体の中心からの方が手先など体の外よりも大きい力が出るからである。胸取りや肩取りの技をやるとき、手への過信からか相手の手を自分の手でもぎとるようにやろうとするが、実は相手が持ってくれている胸や肩で直接対するほうがより力が出るのである。体の中心に近ければ近いほど、強い力・エネルギーが出るものだからである。

人は仕事をするときには、手を使わなければできない。勿論、合気道で技をかけるときも手である。問題は手の効率的な使い方である。それには、最も体の中心に近い手・腕を使えばいいわけである。それは、肩甲骨である。肩甲骨は腕の一部なのである。従って、技は手先で掛けるのではなく、肩甲骨を使ってかければ、より効率的に力を使えるのである。

肩甲骨は誰にでもあるが、その働きの重要性を意識していないのか、肩甲骨を動かす筋肉が凝り固まっているので上手く動かせないのか、なかなか使いこなせないようだ。
先ず、その重要さを認識し、関係する筋肉をほぐして、柔軟に使えるようにすることである。
また、そうなるように、稽古でこの肩甲骨を使うようにしなければならない。坐技呼吸法で押さえられても、手首を操作するのではなく、接点と手先から肩甲骨までは動かさず、肩甲骨で操作する。二教でも、一教でも、四方投げでも、入り身投げでも、まず肩甲骨から力を出し、手先にその力を伝えればいい。肩甲骨が腕であることを再認識し、腕としてこの肩甲骨をもっと使う必要があろう。