【第24回】 爪先(足の指)を鍛える

合気道の稽古では、進むときは踵(かかと)から、「入り身するときは爪先から」と教わった。爪先がしっかりしていないと入り身は難しいことになるが、現代は、生活様式がかわった関係で、爪先がどうしても弱り勝ちである。

爪先(つまさき)とは、足の先端部の指がある部分、または足の指の先の部分のことである。一本一本の指に着目する場合には足指(あしゆび)という場合もある。

私が学生だった時の昭和40年頃までは、まだ下駄を履いて学校に行ったり、道場に通ったものだ。
今は、私もそうだが、ほとんどの人が靴をはいて活動している。靴は履きやすいし、活動しやすいが、どうも爪先(足の指)が退化するように思われる。清朝時代の纏足(てんそく)などは極端な例だろうが、靴は爪先を鈍感にし、歩行を困難にしてしまう危険性がある。
下駄は、指に力を入れるので、爪先が鍛えられて武道の修練にはいいが、今は街の道路がすべて靴向きにつくられているので、下駄をはく機会はほとんどないといえるだろう。

爪先は、入り身の時だけでなく、体を安定させたり、重心を移動するのに重要な働きをする。魄の最高峰といわれる相撲では、見合いから立会いまで、爪先に力を集中して、ぶつかって行く。爪先が弱ければひっくり返されてしまう。また、神楽では、「常に骨盤を倒し、足の親指の付け根で立っているのだそうだ。膝も足首も柔軟で左右の足のどちらにも重心が移せるよう、かかとは紙一枚ほど浮かしている・・。」という。(「密息で身体がかわる」(新潮選書))
爪先を鍛えるのも大切であろう。

爪先を鍛える方法としていろいろあろうが、例えば、
〇 まず、爪先を意識して歩く。靴でもできるが、機会があれば、下駄や草履で歩くのがいい。爪先が弱くなる原因に、指がお互いくっついてしまい各指がばらばらに動かなくなることにある。ばらばらに動くように訓練するためには、五本指の靴下を履くのもいい。
〇 山歩き。特に、登りは爪先を使うのでよい。
〇 四股を踏んで、腰を落とし、股をわって、仕切りの体制をとる。全体重が爪先にかかり、爪先が鍛えられるし、バランスの稽古にもなる。
〇 前述の爪先から入って、入り身の稽古をする。入り身は入り身投げではなく、入り身転換などいろいろな入り身がある。