【第22回】 体をつくる

合気道にはかって誰でも入門できたわけではなく、身元の確かなもの、さらに柔剣道の有段者しか入門できなかったそうである。私が入門した昭和36−7年頃は既に誰でも入門ができたが、ほとんどの稽古人はなにか他の武道やスポーツをやっていた人々であった。

その頃は力が強い人ばかりだったので、力いっぱいの稽古をしており、開祖はそんなに力を入れずに、力を抜けとよく注意されていた。その後、だんだん武道もスポーツもやったことのない稽古人が増えてきたこともあって、稽古も柔らかくなってくると、開祖は今度はしっかり握ってやれといわれるようになった。

開祖はすでに武産合気の域に入られ、流れの技を示される機会が増えてきたことにより、稽古人も影響されたこともあるだろう。しかし、開祖は、われわれには力を抜いた稽古は許さず、坐技や基本技で体と魄を練るよう導かれた。稽古が終わって先輩仲間と自主稽古をしたり、先輩の武勇伝を聞いていると、ときどき開祖が見えて、ご自身の北海道では熊と一緒に寝たとか、わしは力が強かったとか自慢話もされていたが、最終的には魂が魄を導かなければならないけれども、まず魂の土台となる魄が大事であるからまず魄を鍛えよということだったように思われる。

開祖は魄の最高のものは、相撲だと言われ、相撲を大変評価されていた。
体をつくるのに相撲がいいと言われても、道場で相撲をとることもできないし、せいぜいテレビで観戦するほかにはない。しかし、見ているとナンバの動き、脇をしめる、気の体当たり、中心をとる、引かずに出るなどの重要さがわかってくるものだ。

さらに目につくのは、相撲取りの体の柔軟さ、強靭さである。これが少しでも身につけばいいのではないか。そんなことを長年考えていると、最近「相撲健康体操」というビデオが日本相撲協会から出されていることを知り、さっそく購入してその12の型をやってみた。力士が稽古前に行う準備体操を一般の人にも無理なくできるようにした健康体操であるが、武道をする者にとっても、家でも体を柔軟にしたり、鍛えるのにいい体操である。例えば、四股の型は大変いいように思われる。大東流柔術の故佐川師範も生前、毎日、四股を踏まれていたという。下半身がしっかりするし、バランスもよくなり、股関節がやわらかくなる。昔からいいと言われているものは、いいであろうからやってみる価値はある。一度、「相撲健康体操」をやってみることをお勧めする。