【第216回】 手

合気道の技は手で掛けるが、手の遣い方は注意しなければならない。何故ならば、手は自由に動けるし、技をきめるのに遣うが、遣い方を誤れば、技をきめる邪魔をすることにもなるからだ。
今回は、技を練磨する上で、手の遣い方を考えて見たいと思う。

まず、技を掛けるにあたって、手をあまり早く出さないことである。特に、正面打ちからの一教や入身投げなどの際に、手を早く出しすぎる傾向にあるようだ。合気道の動きの基本は、体から入ることであり、手から入ってはならない。
手は体について動くので、先ず体が動いて、手が体についてこなければならない。手が先に出るということは、体が残り、居着いてしまうことになる。

次に、手は出来るだけ自分の正面をカバーしていなければならない。一教、入り身投げ、四方投げ、二教、三教などで、基本的に手は自分の正面に置き、相手が攻撃してきたとしても、常に自分の手で防げるようカバーしていなければならない。

また、手は自分をカバーするだけでなく、技を掛けながらカバーしている手から、何時でも即攻撃に変われるようにしていなければならない。例えば、一教で相手の腕を抑えている外側の手は、腕を抑えていながら、相手の顔面に対していつでも突きを入れられるようにしていなければならない。(写真)

相手が打ってきたり、突いてきたり、手を掴みにくる場合でも、それに対して技を掛けて行くこちらの手は、ひとつの軌跡を描かなければならない。つまり手先は相手の急所、急所を狙っていくから、その点を結んでいく軌跡を描くことになる。例えば、正面打ちで相手の手を受ける場合、こちらの手先は、相手の腹、鳩尾、喉仏、人中、烏兎、倒天(額)と順に移動して最後に、相手の手を受けることになるが、気持ちは常にこれらの急所を、いつでも突けるようにしていなければならない。

手は自分を相手の攻撃から守るためと、いつでも相手を攻撃できるために、基本的には体の正面の中心を上下に動くことになるはずである。