合気道では相対稽古で技の練磨をしていくが、技を効かせるためにはいろいろなことに注意しなければならない。その内の鉄則のひとつは、相手に触れている接点を先に動かさないことである。手首を持たれたら、手首から動かしてはいけないし、胸を掴まれたら胸から動かしてはいけないということである。接点とは、相手が動かないようにしっかり掴んでいるわけだから、本来は動かないものである。それを無理に動かせば、争いになるし、それでは技ではなくなる。
相手が手首を掴んだら、手首以外のところを動かすことであるが、その内の重要な箇所に肩甲骨がある。
肩甲骨は、上肢と体幹を連結する要(かなめ)であり、上肢の運動を補強するものであるといわれる。体幹の力を手に伝える中継所であるとともに、肩甲骨は左右合わせて34もの筋肉がついていて、大きな力を出す場所でもある。従って、この肩甲骨の働きが悪いと、手に力が出ないことになる。
肩甲骨の働きをよくするためには、ここについている筋肉を、強く、そして柔らかく、柔軟にしなければならない。この肩甲骨は、鎖骨としかつながっていないため、可動域は広いが、非常にゆがみやすいという性質があるし、また、遣わないでいると固まってくる。年配者を後ろから見ると、先ず肩甲骨が歪んだり、そのまわりがガチガチに固まってきているのが多い。
稽古をしている人でも、肩甲骨(周辺)の硬い人が多い。そういう人達は、肩甲骨を遣って技を掛けるのではなく、手先を遣ったり、肩甲骨と反対側の体の裏(胸側)をつかっている。また、受け身をきちっとやっていないようである。一教や二教や三教の受け身の最後を極限までやらず、腕、肩、そして肩甲骨を十分伸ばしていないのである。
肩甲骨は上下、内外に、柔軟に動かなければならない。これが柔軟に動くためには、先ずは肩甲骨周辺のカスをとって柔軟にしなければならないが、次のことなどを注意しなければならないだろう。