【第20回】 小指を鍛える

剣道でもそうだが、小指は重要な働きをする。
開祖の演武写真や銅像に見るように、技の極めての小指には気力がみなぎっている。

小指に力をいれると、腹からの力が伝わってくる。この小指は重要であるが、小指を独立して使うのは容易ではない。

初めのうちは手首から先の指先まで気力が通らず、指が萎えており、まっすぐにはならない。「朝顔の手」をつくっても、美しい朝顔にはならないものだ。

指がまっすぐになったら、意識を入れて指を一本々々分けて使う稽古をするわけだが、今回は小指の鍛錬、すなわち小指の使い方を紹介する。

  1. まず、小指を最も鍛える稽古の第一番目は、二教裏の手のしぼりであろう。手首を両手の小指で絞り込むわけだが、人差し指と中指には力を入れず、小指と薬指と親指の三本の指を主に使う。この稽古をすると小指や薬指が鍛えられるだけでなく、脇がしまり腹が練れるので、合気道の基本稽古である。
  2. 次の例は、諸手取り呼吸法や片手取り呼吸法である。相手を投げた後のおさめの姿勢は、両手をつきだし、相手の足が飛んでくるのを防ぐわけであるが、このとき、手の平を上にし小指に力をいれて脇をしめる。
  3. 坐技呼吸法でも、相手を浮かせるとき、腕がお能でいう"差し込み"から"開き"になり、そのときに小指を立てながら、小指に相手の手をくっつける。このとき、小指に充分の力がないと、相手がくっつかないし、相手を浮かせることもできない。
  4. 正面打ち一教で、相手の手首と接したところで、接点は動かさずに、小指だけを下げ、相手の手首にひっかける。小指だけで難しい場合は薬指も使う。 小指を下げて相手の手とくっ付く(結ぶ)ことによって、相手と一つになり、その後自由に技をかけられるようになる。

本部道場の故有川師範の稽古は、技や型を通して合気の体を作るというお考えだったし、また、毎回、体の或る特定部の鍛錬のための稽古を厳格にされていた。

小指の鍛錬をテーマにした稽古日の一例として、1999年8月18日の稽古があるので、稽古の内容と先生のコメント(私的解釈を含め)を紹介する。

○諸手取り呼吸法:
  投げ終わった最後の手は、親指に力を入れず、小指に入れる。そうすると腹からの力が伝わってくる。開祖の銅像の手の形となる。
○正面打ち一教:
  相手の手首を切り落とすようにする
○正面打ち入り身投げ
○正面打ち腕押さえ呼吸投げ
  充分深い位置まで入り込むとやりやすい
○正面打ち小手返し
○横面打ち体捌き
○横面打ち肩崩し
  本来は面を打つのだが危険なので肩を崩す
○横面打ち四方投げ
○横面打ちすみ落とし
○坐技呼吸法