【第182回】 手もとに収める

合気道の技は手で掛けるので、手の遣い方は大事である。しかし、手は体の中で一番自由に動かせるし、軌道修正も無意識で容易にできるので、大概は手の遣い方など余り気にせずに稽古しているのではないだろうか。

手を効果的に遣う上で大事なこととしては、まず腰腹と繋げて遣うことがあげられる。手が腰腹と繋がっていなかったり、切れてしまえば、手捌きとなって、腰の力が手先に伝わらない。手だけを振り回すのは、腰腹との結びが切れることになるので、間違いとなる。さらに、手を遣うのにも、末端の手を動かすのではなく、手の対極にある腰を動かすことによって、手が動くようにならなければならない。

手の動きは意外と小さいもので、基本的には、十字々々に反転するか、体の中心を上下に移動するだけとなる。もちろん、どの場合にも腹腰と繋がっていなければならない。

相手の手を掴んで技を掛けようとするとき、手は体の正面の中心線上で掴んで遣わなければならない。これが中心を外れて横で取ると、技が効かないことになる。

そうでないと上手くできない典型的な技として、「肩取り四方投げ」(両肩取りや後ろ両肩取りを含む)がある。初心者はどうしても肩にある相手の手を無理して掴もうとしてしまうために、手は体の中心を外れてしまいがちで、手と腰腹の結びが切れたり、自分の腕が折れたり、相手の手を掴む体勢が無理になるために、自分の体勢が不安定になる。それでは、この技は効かないことになる。

「肩取り四方投げ」で手を遣うポイントは、腰腹と結んでいる手を自分の目の前に置いておくことである。面とした体を十分に撞木々々で返し、相手の手を十分伸ばしたところで、相手の手が自然に顔面にある自分の手に収まってくるはずである。つまり、相手の手を掴むのではなく、相手の手が自分の手元に収まってくるようにするのである。「三教」「二教」でも同じであるが、これは合気道すべての技に言えるはずである。

手はむやみに動かして遣わないことである。体を十分に開き、手を体の中心に置いておけば、相手の手は自然と手元に収まるようである。不思議々々。