【第166回】 基本準備動作

最近の合気道の道場稽古では、準備体操から始まるのが一般的なようだ。主にけがをしないための、体全体の軽いストレッチが目的といえよう。我々が入門した頃は、準備体操をやる師範はほとんどいなかったように思う。体を伸ばす準備体操は、稽古の始まる前に各自やってしまい、稽古は「基本準備動作」から始まったものだ。 「基本準備動作」とは、技の基礎を固める重要な動作とされ、この動作をすることによって、技の基礎が出来るようになるだけでなく、その技が出来るための体が出来るので、ストレッチの体操にもなる。

「基本準備動作」には、一人でやる単独動作と二人でやる相対動作がある。単独準備動作としては、運足法(継足、歩足、転回足、転換足)、膝行、体の変化、一教運動、呼吸転換法、手首関節柔軟法(二教運動、小手返し運動、三教運動)、舟漕ぎ運動などがある。この内、手首関節柔軟法は今でも、準備運動の中でよく行われている。

相対動作には、肩手取り転換法(外転換、内転換、後転換)、両手取り転換法(前転換、後転換、後取り転換法、背伸運動などがある。この内、肩手取り転換法は今でもよく行われている。

基本準備動作にはまだまだあるだろうが、これらの基本準備動作が十分できなければ、技は上手くいくはずがない。基本準備動作は技をしっかり稽古をしていれば、その中に入っているので、出来るようになるが、技から基本準備動作を身につけるのは難しいだろう。やはり、まず基本準備動作を意識して身につけて、技の基を築いていったほうが自然だろう。

技が出来るためには、技だけを稽古しても限界がある。呼吸法と基本準備動作の習得が不可欠である。呼吸法と基本準備動作が、技の基礎固めをするのである。

昨今では、基本準備動作の稽古が減ってきているようである。稽古時間で減ってきている分、自主稽古でカバーすればよいだろう。基本準備動作を見直したいものである。

参考資料 『合気道技法』(植芝盛平監修 植芝吉祥丸著)