【第155回】 技は足で掛ける

合気道の技は大概は手で掛けるので、手に気持ちが集まる。手は頭とつながっているとも言われるので、頭で考えれば手も遣うことができ、手を遣うことはそう難しくないようである。しかし、手遣いや、そのために頭を遣うことで、下半身にある足が疎かになりがちである。

技をきめるには相手に接している手の部分に最大の力が掛かるようにしなければならない。掛けられる最大の力は、自分の体重の重力である。この重力を掛けるためには、足が大事である。

相撲で「足が揃う」ということが忌み嫌われるように、足が揃ってはだめである。重心は片足のどちらかだけに載っていなければならない。また足が止まってもいけない。足が止まれば、上半身の力しか出せず、手しか遣えなくなるので、大した力にはならず、その不足分をカバーしようと、上半身をひねって使ったりしてしまう。足は揃わず、そして止まらないように遣わなければならない。

足が交互にスムーズに動く自主稽古には、杖を振ったり、突きをするのがよい。杖(じょう)を振ったりすることで、足がスムーズに動くようになるだけでなく、手と足と体が連動してスムーズに遣えるようになる。

足は三角法の撞木(しゅもく)で遣う。日常的な平行の足遣いでは、重心の移動がスムーズにできない。入身もできず、正面衝突してしまう。片手取り四方投げで、相手にぶつかったり、正面打ち入身投げで入身に入れないのは、撞木の足が遣えないのが大きな理由と思う。

重い重力を出すためには、足に体重が真上からかかるように、足を運ばなければならない。上半身の重力を腹腰に集め、そこからの重力を腰から踵に落としながら進むのである。腰の重力が着地した足裏にすべて載り、腰と足が連動して動き、腰で足が動くようにならなければならない。足が腰より先に動いたり、足先を膝より前に出したり、つま先から足が着地したりすると力が止まってしまい、力が出ないだけでなく、膝に負担をかけ痛めることになる。

足を正しく遣うための自主稽古には、四股を踏むのがいいだろう。路上や仕事場を歩くときも、これらの点を注意して歩くことである。一人で正しく歩けなければ、相対稽古で上手く足が使えるわけがない。

技は足で掛けるといってよいほど、足は大事である。相手を浮き上がらせるのも、抑えるのも足といっていいだろう。相手との接点である手は、基本的に動かしてはならないし、体は捻ってもいけないので、動かすことができるのは下半身しかない。下半身で動く部位は腰と足である。主に腰は横(左右)に、足は縦(上下)に遣うことになる。この腹と足を遣うことによって出る力を手に伝えることになる。手を先に動かしてはいけないから、まず腹と足が動かなければならない。

足は手と違って、頭から遠くにあるからか、頭で考えた通りにはなかなか動いてくれない。また、教えることも難しいようである。自分で何度も何度も繰り返し稽古をして、足に覚えさせるほかないようである。