【第144回】 手刀を鍛える

今の合気道では、足で技を掛けることはほとんどなく、手でかける。手は技を掛けるだけでなく、面を打ったり、相手の手を捌くにも遣うので、手が自由に遣えなければならないことになる。

相手の面(正面、横面)を打ったり、相手の突きを捌くのは手であるが、手を刀のように遣うので、手刀といわれる。手刀が上手く遣えないと、技は効かないだけでなく、相手側の稽古にもならない。例えば、正面打ちでも、正面からずれたり、刃筋が立っていなかったり、腕が曲って力が抜けていたりすると、相手は技を変えなければならず、正面打ちの稽古ではなくなって、技が変わることになってしまう。

空手など他の武道では、手刀の形にいろいろあるが、合気道の場合は剣をもった状態から、剣を離し、手を開いた形になる。(写真)

この形の手刀を剣のように遣うが、上手く遣えなければ技も上手くいかない。 例えば、手刀で正面を打つ(切る)場合、手刀の振り上げで上げた脇を広げ、肩が抜けなければならないし、切下すとき、手刀を押し込むようにしなければならない。ただ切り下ろすだけでは、刀の場合、切れないし、これで一教の技を掛けても相手は崩れない。

正面打ち一教では、手刀を相手の腕と十字になるように遣って、崩したところから更に手刀を寝せるように遣い、相手の体を十字に崩し、そして相手の腕を押さえて倒す。

横面打ちの技を掛けるにも、手刀が遣えないと、技はなかなか上手く掛からない。徒手で手刀の素振りを十分練習して、手刀が腰腹と結び、無理なく螺旋で動くようにしなければならない。相対稽古での横面打ちに対しては、打ってくる相手の腕や手首にこちらの手刀をくっつけて、螺旋でそこが離れないようにし、腰腹からの力を遣って相手を引き出さなければ、相手を引き出すことも、技を掛けるのも難しいだろう。(裏)
手刀は、相手が打ってきたり、突いてくるものを捌くことにも遣う。捌くためにも手刀が上手く遣えなければ、突きや正面打ちの入身投げ、小手返し等も上手くできない。

手刀の遣い方は、合気道の技の相対稽古で身につけるのがよいのだが、そのためには徒手による素振りなどで、手(手、腕、上腕、肩甲骨)を、切下し、切り上げを上下左右8方向、自由に動けるようにする。また、手刀の刃筋が常に直角に刃筋が立つよう、そして、手刀が無理なく螺旋で動くように鍛錬しなければならない。