【第137回】 肩

合気道の技を掛けるのに遣うのは手先だけではない。いうなれば体のすべての部位を遣えなければならないと言える。従って、体のすべての部位が遣えるように鍛錬しなければならない。しかし、手を遣わずに他の部位を遣って、相手を崩したり倒したりするのは、なかなか容易ではない。なぜならば、サッカー選手などを除けば、ほとんどの人は日常生活で長年にわたって手を遣って仕事をしてきたからである。体の各部位を遣う重要性を理解し、その部位を、はじめは分解し、バラバラにして遣うよう、意識して稽古しなければならない。

肩が上手く遣えると、手と比べても比較にならないような大きな力が遣える。例えば、四方投げで相手の腕の下に自分の肩を入れて投げれば、多少力持ちの大きな人でも容易に崩し、投げることが出来る。この肩が上手く遣えれば、合気道の稽古では体の大小はあまり関係ないというのが本当だとわかるだろう。もちろん、四方投げで相手の腕の下に肩を入れるのはそう簡単ではない。どうしても手でやろうとして、手に力がこもってしまうからである。武田惣角がコヨリをもたせて、そのコヨリを切らずに相手を担ぎ上げてしまったというのと同じ原理を使って、接点となるコヨリ、手を動かさないことである。

四方投げ以外にも、合気道の稽古で肩を鍛えることができる。本来はすべての技や呼吸法などの「わざ」でも、肩を遣って、肩も鍛えなければならないが、肩を鍛えるのにやり易いものをいくつか紹介する。これはかって有川師範の時間に行なわれた「肩を遣う、肩を鍛える」プログラムである。以前から紹介しているように、有川師範の稽古時間は必ずテーマがあった。この時間(2003年3月5日、19時〜20時)は「肩を遣う稽古」であった。

○ 準備運動: 肩をほぐす
  深呼吸運動から正面打ち、横面打ち、突きの動きの単独稽古
○ 「諸手取り呼吸法」: 肩を貫く稽古
○ 「正面打ち入り身投げ」: 肩を開く稽古
○ 「正面打ち小手返し」: 肩を返す稽古
〇 「正面打ち四方投げ」: 相手の腕の下に肩を入れて肩で崩し、投げる稽(前述)
○ 「正面打ち回転投げ」: 持った手を相手の肩にひっかかるようにする
                  (受身をする者の肩を鍛える
○ 「片手取り入り身投げ表」(直進): 肩で相手の首・上胸をぶっつけて、肩を柔軟、強健にする
〇 「座技呼吸法」(手首を丸め): 肩で押し上げて突き飛ばす)