【第659回】  天は待っている

我々は合気道をやっている。合気の道を精進しているのである。宇宙との一体化への合気の道を進んで行こうとしているのである。目標である宇宙との一体化と結んでいる己との空間と時間が道ということであるはずだ。
合気道は、この合気の道を一歩一歩目標に向かって進んでいるわけだが、目標は見えないし、進むべき道に印しもないし、また、誰もそれはいいとか駄目だとかいってくれないし、そして、そっちではなくこっちに行けとも言ってくれない。

しかし、不思議な事に無意識のうちに、確かにその道を進んでおり、目標に一歩々々近づいているように思えるのだ。何かが導いてくれているように思えて仕方がない。何かが、我々稽古人達を引っ張ってくれたり、押し上げてくれたり、支援しているように思えるのである。

道場での相対での形稽古でも、技づかい、体づかいでも、新しいことが分かったり、出来たりするのは、自分のモノだけではなく、他の何かが教えてくれているように思えて仕方がない。

若い頃は、恐れ多くも、大先生のお話を敬遠してしまっていた。特に、神様の話は興味もなかったし、信じる事ができなかったので、真剣に耳を傾けなかった。しかし、年を取ってきたせいだと思うが、大先生のお話、特に神様のお話の重要性が分かってきた。例えば、古事記に出てくる神様を研究しなければ合気道は理解できないとも思うようになったのである。

長年の合気道の稽古のお蔭でいろいろ分かってきた。例えば、宇宙には意志があることである。それは宇宙天国の建設であり、その完成のために宇宙の万有万物は、神も人も動植物も宇宙天国建設のための生成化育をしているのである。だから、人が宇宙生成化育のためにやるべきことをやれば、天、宇宙は喜んでくれるし、助けてくれることになるはずなのである。

大先生は、「この五つ(日月の気と天の呼吸と地の呼吸、潮の干満、澄みきった玉)のものが世界を浄めて和合させる。植芝ばかりではない。これに賛成する人は同士として光明を天から与えられ、それを感得されるはずである。」(合気神髄 P.14)、「自分の心の立て直しができて、和合の精神ができたならば、みな顕幽神三界に和合、ことごとく八百万の神こぞってきたって協力するはずになっております」(同P.25)等と、その何かの存在を云われているのである。
ということは、光明を与えてくれる天があり、天が光明を与えてくれ、そしてこぞって協力してくれる八百万の神がおり、八百万の神は人に協力してくれるのである。

我々人は、やるべき事をやっていけば、天や神様など何かが助けてくれたり、協力してくれるということだということである。また、天、宇宙はわれわれ人に光明を与えたいと、そして協力したいと待っていてくれているように思える次第である。