【第652回】  宇宙との一体化への道

合気道の修業の目標は宇宙との一体化である。この宇宙との一体化の意味はいろいろあるだろうが、今のところ、簡単に言えば、“自然”になることではないかと考えている。多過ぎたり、少な過ぎることがなくなることであり、その結果、真善美を有することになる。
この為に、合気道の技を錬磨しているわけであるが、合気道の目標である宇宙との一体化に辿り着くのは容易ではないし、もしかすると辿り着けないのではないかとさえ思える。
只、有難いことに、大先生に接して、お話を伺ったり、技や演武を見せて頂くことができたこと、そしてそれらのお話が、『合気神髄』『武産合気』に残されていることである。大先生のお話や御姿や動作を、合気道の聖典である『合気神髄』『武産合気』を読みながら、思い出し、繋げていっているのである。

合気道を始めて60年近くなり、ようやく合気道の目標が宇宙との一体化であること、そして合気道の修業はそれに向かって進むようにできていることがわかってきた。

私が考える宇宙との一体化へのカリキュラムを書いてみる。

まず、合気道に入門すると、単独動作と形稽古で、形を覚え、そして取りと受けで合気の体をつくっていく。合気の基本的な体ができ、そして基本の形を覚えると初段ということになる。

初段で基本の形は覚え、そのための体はできたわけだから、これを更に洗練し、強化していくことになる。多くの稽古人は以前の延長上での形稽古を続ける。しかし、その内に、相手が上手く倒れてくれないとか、争いになるとか、また、己の体を痛めるなどの壁にぶつかることになる。これは万人共通であると見る。従って合気道では、この壁を超えなければならないことになる。

そのために、技の錬磨に入っていかなければならない。技の錬磨とは宇宙の法則を見つけ、身につけていくことである。合気道の技とは、宇宙の営みを形にしたモノであり、宇宙の法則に則ったものである。技を練るために身体を十字や陰陽につかったり、息も十字やイクムビでつかっていくのである。
宇宙の営みと法則が入っている技を錬磨して身につけていけば、宇宙が入ってくるわけである。宇宙との一体化への始まりということになる。
しかし、宇宙の法則は宇宙なみの数があるはずであるから、簡単には身につけることは出来ない。一つ一つ身につけて、それを積み重ねていくしかない。人によって、才能や努力や運によって異なるだろうが、基本の法則を身につけるだけでも40,50年は掛かると見ている。
尚、この段階で、技の錬磨に入らず、形で相手を倒すような稽古をしていれば、前述のように、必ず壁にぶつかったり、体をこわすはずである。

ある程度、法則が身に着き、体が法則に則って動くようになり、そして息づかいも、十字、イクムスビでできるようになると、次の次元の稽古に入ることになる。己の呼吸と天地・宇宙の呼吸や引力と合わせて、技をつかうのである。これについては、「第650回 天地の引力をつかう」「第651回 天地との交流」等々に書いてある。

これまでは己の力だけで技をつかっていたのを、今度は己の力に天地・宇宙の力を加えてつかうようにするのである。
これが宇宙との一体化への道ではないかと思って、そしてこの道を進んでいるところである。