【第637回】  魂魄の結合

合気道は技を錬磨しながら精進していく。宇宙の法則を身につけていき、宇宙の営みと一体化するのである。どれだけ宇宙の法則を会得したか、宇宙に近づいたかの一つの尺度は、技がどれだけ効くかという事になる。大局的に見れば、技を効かすために稽古をするのではないが、技が効かない事はまだまだ修行が足りないということになる。

相対稽古の相手に技を掛けても、そう簡単には上手くいかないものである。技が上手く掛かるためには多くの要因があるからである。例えば、宇宙の営みの基本である、陰陽十字の要因をつかわなければならない等である。

また、はじめのうちは誰でも、腕力などの魄の力で技をかけるので、力比べの相対的な魄の稽古になってしまい、上手くいかないのである。
しかし、これに気づかない稽古人が多い事と、この相対的な魄の稽古から抜け出せない稽古人が多い事が気になる。上手くいった技とは、本人だけでなく、相手も上手であると納得する技であると考える。
腕力や体力などの魄で技を掛けると、相手は心から納得しないはずである。それは大事な技の要因が欠けているからである。

合気道の教えでは、すべてのモノやコトは、二つの異なるモノの結合であるということであり、片方だけでは正しく、上手く働かないのである。魄で技を掛けるということは、もう片方が欠けているので駄目なのである。だから、力(腕力、魄力)で技を掛けては駄目だといわれるわけである。

魄のもう片方は何かというと、勿論「魂」である。魂魄が結合し、そしてこの魂魄で技を掛けなければ上手くいかないのである。

合気道の技の本義は武の本義である。大先生は、武(技)には魂魄の結合が必要で、魂魄が結合することで、武(技)の本義を現わすことができると言われている。(『合気神髄』P.96)
武の本義とは、敵を殲滅する小乗の武と愛の大乗の武と考える。

魂魄が結合した技とは、簡単にいってしまえば、力(魄)と気持ち(魂、心)が共に込められた技であり、心身結合の技ということになる。力だけに頼ってやるのではなく、しっかりと力を出し、気持ちを入れて技を掛けろという事である。
それまでの魄の技から、その魄に魂を結合して技を使うようにすればいいわけである。

それでは、技をつかう際、心身の結合をするにはどうすればいいのかということになる。只、念じたり、願ってもできる事ではない。
大先生が教えて下さっているのは、阿吽の呼吸である。阿吽の呼吸は、心で身を自由自在に結ぶ、つまり魂魄の結合である。そして各自の使命の実を結ばせるといわれるのである。
阿吽の呼吸によって、魂魄の身心を自由に結び、そして技を創出する(各自の使命の実を結ばせる)ということである。

力の魄から魂魄結合して技を掛けるようにすれば、技は異質なものに変わり、そして稽古も、魄の稽古から、次の次元に変わることができるだろう。