【第601回】  合気道は武道の根元

今は時代が変わって違うようだが、過っては開祖のもとには多くの武道家やスポーツ選手、踊りなどの芸能家などなど、超一流の方々が入門された。
私が入門した頃でも、開祖(大先生)は、合気道は武道の根元であるとよく言われていた。つまり、合気道にはすべての武道、そしてスポーツや芸能にも共通する大事なことが学べるということである。

当時は、われわれが稽古している合気道に、超一流の武道家が求めていた武道の根元があるなど分からなかったし、武道の根元がどういうものなのかも遠い存在で、研究しようなどとも思わなかった。

稽古をしてから半世紀以上経ったせいだろうか、この大先生が言われた「合気道は武道の根元である」ということを、少しずつ肌で感じられるようになってきた。それは合気道の技の錬磨を通して、これは他の武道、また、すべての武道に必須の事であるはずである、と思うことがどんどん増えてくるからである。そして合気道は間違いなく、武道の根元があると確信するのである。

合気道は、宇宙の営みを形にした技を身につけていく武道である。合気道の技には宇宙法則という法則があり、この宇宙の法則はすべてのもの、つまり万有万物に適用される。他の武道であれ、スポーツであれ、踊りであれ、また、日常生活においても、適用されるべきものであるはずである。
例えば、合気道の教えと稽古は、@天地は縦横の十字で生まれ、営まれている。天地の気と息に合わせ、体を十字十字につかって仕事をする。A万有万物は陰陽表裏一体でできており、陰陽で仕事をする。B息は阿吽の呼吸やイクムスビである。C体の末端は体の中心の腰腹と結び、腰腹でつかわなければならない。D相手がいるが相手はいない(相手を自分の一部にしてしまう)E相手を倒すのではない、相手が自ら倒れる(倒すのを目的にするのではなく、正しいプロセスをした結果、相手が倒れるようにする)FこのDとEから愛が生まれる。愛とは相手を思い、相手のためにもなるように技を掛ける(仕事をする)こと等々。

また、仕事は魂魄で魂を表にしてやらなければいい仕事はできない。力に頼ってはいい仕事ができたいということである。恐らく、開祖に教えを乞いに入門した多くの武道家は、魄を土台にして魂が主導権を取らなければならないことに感銘したのではないかと思う。かっての武道家は、腕力や体力などの魄には、相当の自信があったはずだが、己の限界を乗り越えられずに、どうすればいいのか悩んでいたはずである。それを開祖の合気道が応えたわけである。

合気道からは、弓を引く際の息づかい、剣をつかう際の十字の手、肩、胸鎖関節のつかい方、撞木(六方)の足づかい、イクムスビでの体を柔軟にし、強固にする息づかい、気の体当たりと体の体当たりなどは、すべての武道が求めている共通事項であろう。
そして更に、我々次元のレベルを超えて、開祖や先人たちがやられた、摩訶不思議な武道の根元があるはずである。
開祖は、「合気は日本の武道世界の武道の根元にして万有万神の条理を明示し、天真、地真、物真一致の本義である」(合気神髄 P.160)といわれているのである。「合気道は武道の根元」もまだまだ奥が深い。