【第538回】  気の妙用と呼吸

最近は、主に「気」について研究している。「気」は武の本源であると開祖が言われているわけだから、大事であるというより、「気」を知らなければ真の合気道にならないことになる。
しかし、「気」は見えないし、これまで誰もこれが「気」であり、どうすれば「気」を身につけ、技に結び付けていけばいいのか等を具体的に示してくれなかった。だから、自分たちで研究して会得していくほかないことになる。

相対稽古の技の錬磨を通して、試行錯誤を繰り返しながら見つけていくことになる。その発見が正しいかどうかの指針と判断は、開祖が言われたこと、書かれたことに照らし合わせればいい。有難いことに、開祖は『合気神髄』『武産合気』などに合気道に関するすべてを示されていると思う。「気」に関しても、その発見や考えが開祖のお言葉に沿っていれば正しいし、反していれば間違っていると思えばいい。

さて、稽古での試行錯誤から、「上達の秘訣 第538回」で書いたが、「息づかいによって、手先にエネルギー(気)が流れ、出てくると、体中から気が出るようになるのだろう」と書いた。
つまり、イと息を吐いて相手と接し、クーと息を引きながら技を掛けていくわけであるが、ここに「気」が出てくるのである。

しかしながら、更にこのクーを観察してみると、クーはゥーとなる。ここで胸で横に拡がっていたエネルギーが縦に腹に下り、腹に集まってくる。このエネルギーは、手先から腰腹までだけでなく全身を覆うエネルギーとなるのである。

そしてこの全身を覆うエネルギーで呼吸をして技をつかうと大きな力が出るし、技も(実力に応じて)自由自在につかえるのである。
これが「気」であると考える。この「気」によって呼吸(息)を大小、遅速と自由に変化させてつかえるようになるはずである。
因みに、これまでのイクムスビでの呼吸で、クーと吸っただけの力では手や体の力しか出せないようで、この「気」による呼吸とは質量ともに雲泥の差がある。

この「気」による呼吸の重要さを開祖は、「『気の妙用』は、呼吸を微妙に変化さす生親(いくおや)である」(「合気神髄 」P.86)と言われているのである。妙用とは、不思議な作用とか非常にすぐれた働き、という意味である。
つまり、呼吸を微妙に変化させるのは「気」であるということである。
だから、前述のクーゥーで腹に集まり、手先や全身を覆うエネルギーを「気」であると考えたわけである。

これまで心と体を結ぶのは息であり呼吸であると書いてきた、その息、呼吸は気の妙用の助けを借りなければならないわけである。
また、技は呼吸で掛けるのであるが、結局は「気の妙用」の呼吸でかけることになり、技は気でかけるということになるわけである。