【第493回】
天の気、日月の気
これまで技を生み出すためには、「天地の呼吸と地の呼吸をいただく」(第474回)や「地の呼吸 潮の干満」(第490回)や「天の呼吸」(第491回)などで、天地の呼吸について細々と研究してきた。
今回は、天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出すための天の気、天地の気について、研究してみたいと思う。
開祖は「天の気によって天の呼吸と地の呼吸(干満)を合わせて技を生み出す」といわれている。つまり、天地の気と気結びして、自己の気と宇宙が一体となり、天の気によって、天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出していく、というのである。
そこで、天の呼吸と地の呼吸を動かす「天の気」について、開祖の言葉を基に研究してみることにする。
- 天の気は陰陽にして万有を生み出す(開祖):天の気とは、陰陽であるということである。十字で、螺旋でもある。
- 「円に十を書く。その上に左右の足で立ち、左足だけで巡るのである。そして天の気,地の気、要するに天地の気と気結びすることである。合気では、自己の気と、この宇宙と一体となる」(開祖):天の気には地の気もあり、天の気とは天地一体の気である。天(地)の気と気結びすることができて、宇宙と一体となることができる。つまり、天の気には、自己の気と宇宙の気があることになる。
- 天の気とは日月の気:開祖はこれを明確には書かれてないが、筆者は天の気と日月の気は同じであると思う。その理由は、後述する。しかし、開祖は「天の呼吸即ち日月の呼吸、地の呼吸即ち潮の満干、と四つに分けている」とか、「天の呼吸は日月の息であり、天の息と地の息と合わして武技を生むのです」などといわれている。
次に、合気道の相対稽古で、この「天の気」はどのようなものであり、具体的にどのようにつかって技を生み出していくか、を見てみることにする。
「天の気」は、天の呼吸と地の呼吸を動かすわけだから、まずは「天の気」を出すようにしなければならない。
まず、心にとめておかなければならないことは、開祖がいわれるように、人の体と宇宙は同じである、ということである。
下腹に気を入れて、尾てい骨から背骨に気(持ち)を流すと、背骨のまわりを螺旋をえがいて何かが舞い上がっていくようである。同時に、下に降りてくるものもある。これが天の気であり、地の気である、と考える。
この状態から、息を腹式呼吸で円く吐きながら腹に集めるのが「天の呼吸」、そして、横の胸式呼吸(潮の干満)で吸うのが「地の呼吸」、ということになるだろう。確かに、天の気が働かなければ、天の呼吸も地の呼吸もうまく働かず、技も生まれない。
さて、天の気とは日月の気であろうと書いたが、その根拠のひとつに、ヨガの世界では、合気道でいう天の気に、日月とか陰陽という言葉が使われているからである。
ヨガでは、カラダの中心(脊髄の基底部から頭頂)を通っているプラーナの経路の左右を、DNAのらせん構造のように、イダーとピンガラがめぐっているという。イダーとは月に象徴されて、陰であり、ピンカラは太陽に象徴されて、陽であるという。
ヨガでは、呼吸(吸息・止息・吐息)によって、そこに眠っているエネルギー(ヨガでは蛇という)を揺さぶり起こし、頭上まで龍のように昇らせていくことで、肉体の全てを活性化し、統合(YOGA)へと導いていくというのである。
合気道の技を生み出すためには、天の呼吸と地の呼吸を充分に働かすために、天の気、日月の気に働いてもらわなければならないことになる。
まずは、己の頭上まで螺旋でエネルギーを昇らせ(自己の気)、次に宇宙の一元の大神様まで昇らせればよいのだろう。
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