【第491回】  天の呼吸

前回は『地の呼吸 潮の満干』で、潮の満干の地の呼吸は、天の呼吸によって生まれる、と書いた。

そこで、今回は天の呼吸とはどのようなものなのか、また、それをどのように身につけていけばよいか、を研究してみたいと思う。

開祖は、天の呼吸を「天の呼吸は日月の息であり、天の息と地の息と合わして武技を生むのです。地の呼吸は潮の満干で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります。天の呼吸により地も呼吸するのであります」といわれている。つまり、天の呼吸とは、日月の息であり、天の息であるという。この天の呼吸と前回の地の呼吸(潮の干満)が合わされば、技が生まれるのである。

また、潮の干満の地の呼吸には天の呼吸との交流が必要で、しかも先ずは天の呼吸がなければ地の呼吸はない、というのである。

先ずは、天の呼吸をしなければならないのであるが、それには天の呼吸を技につかえるように、現実的に考えなければならないだろう。では、日月の息、天の息がどんなものであるのか、ということになる。

地の息は横の息であるから、天の息は縦の息であり、己と天(太陽や月)と結んで交流する息である、と考える。縦の息で天に結ぶ、円い息である。開祖は、一元の大神様に結ぶように、といわれている。

天と息で結ぶ、といっても容易ではないが、気持ち、心で結ぶことはできる。天を思えばよいのである。また、祈りでもよいだろう。これは、気で結ぶことになるだろう。天を思えば、天の気との交流となり、天と結ぶことになる。そして、この天の気によって、天の呼吸、地の呼吸が生まれ、そして、技が生まれる、というのである。

天の気と結ぶためには、己自身も天へと気を拡げていかなければならないだろう。その方法を、開祖は「まず立つところに天盤、地盤のふみをもって霊系の祖と体系の祖を左の足に、ずっとそこの国までつき戻して、常立ちの姿に宇宙一杯に気の姿を拡げているのである」(「合気真髄」)といわれている。天へ向かう上と、地中の下へ、息と気持ちを拡げていくのである。

これで、己は天と結び、地とも結び、己の心体は天地の気で貫かれることになる。これを、全大宇宙の気、大地の気、アウンの気を貫いて世の中を守って行くみそぎの「天の村雲」とか、大地の妙精の現われと天の現われとを一つに貫く天と地の両刃の剣「九鬼」、というのではないかと思う。

ここから、左足、右足を天盤地盤と踏み分けながら、地の呼吸を産み出し、相手と結び、導き、そして、天の呼吸で収めるのである。相手に手を取らせるにしても、打たせるにしても、先ずは天の呼吸で天の気を頂いてやらなければならない。

技は、呼吸によって生み出される。縦(腹式呼吸)と横(胸式呼吸)の十字の呼吸、潮の干満の呼吸が大事である。だが、最初の天の呼吸をしっかりとやらないと、後の呼吸もうまくいかず、よい技が生み出されないのである。

何事も初めが肝心ということであろう。